アメリカは規制緩和へ、EUは足並みの乱れが顕著に
こうした法案を巡る議論が進む中、AIを巡る国際情勢に大きな変化がありました。一つには、1月に誕生した米トランプ政権がバイデン政権時の2023年に発表された「AIのリスク低減のための大統領令」を撤回したことです。トランプ政権はより規制緩和に向かうと考えられています。
また、2月に仏で開催されたAIアクションサミットでは、60の国と地域が賛同した共同声明に米英が署名しないという事態が発生しました。アメリカは過度の規制に反対する立場を表明し、イギリスは国家安全保障とグローバル・ガバナンスについての文言に懸念があったとしています。このAIサミットの枠組みは、2023年にイギリスが開始し、前回は韓国でと、半年ごとに開かれてきているものですが、各国の競争が激しくなるなか、国際協調の難しさを示すものとなりました。
さらに、サミットの議長国であった仏マクロン大統領は「欧州は規則を簡素化し、より事業を行いやすくし、米国と歩調を合わせる必要がある」と発言し、EU AI法についての事実上の批判を行い、足並みの乱れが顕著になってきました。
自民党のAIプロジェクトチームをまとめ役として活動し、現在は、AI法案の責任者の一人、平将明デジタル大臣は、自身のYouTube番組のなかで、「特にAIについては、アメリカがトランプ新大統領になって、前のバイデン大統領の大統領令を破棄した。だから、AIにおいてはもっと自由になる。日本は、AIの名の下に、ハードローで全部傘をかけるような規制はしないと言っている。なので、バイデンさんから、トランプさんに変わって方針が転換してもほとんど影響ない」(1月28日)と述べています。
また、欧州については「欧州はAIにレギュレーションを決めて世界標準を取りに行こうとしていたが、2年後にハードローでというようなペースでは(発展のペースが速すぎて)あまりに間に合わないと。そこで、仏はEUとは一緒にやらず、米に近い政策に舵を切ったと。仏には原発が多数あるので電力が安いので、データセンターや人材が集まってくると」(2月18日)と、フランスの戦略転換の背景を分析しています。

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