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〝幸福国〟を巡る旅で得た経験を生かし、元広告プロデューサーが子どもたちの未来のために起業

文●杉山幸恵

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これからの若者、そして日本の未来のために。世界と日本の教室をオンラインでつなぐ

 8か月間の世界一周を通して幸せとは何かが見えてきた堂原さん。加えて日本と世界を比較しながら旅したことで日本のよさを再認識する一方、課題も多く見えてきたという。特に、日本経済が世界と比べて低迷している現状を知り、「この日本社会をどうにかできないか」と考えるようになった。

 「幸福度の高い国々を見てきた知見から、社会を良くするには政治と教育が重要だと考えました。でも、日本の政治を変えるのは自分には難しい。ならば教育こそがカギではないかと。そもそも、私自身が世界一周を通して多くの気づきを得たように、社会をよくするヒントは世界にたくさんあります。だからこそ、子どもたちにも広い世界を早くから見て、多様な選択肢や価値観があることを知ってほしい。そして、自分なりの幸せを見つけ、日本社会をよりよくしてほしいと思ったんです」

 そんな思いから堂原さんは、2021年に「株式会社WTOC(ウトック)」を設立。世界と日本の教室をオンラインでつなぎ、同世代同士が意見交換できる場をつくる事業「教室から世界一周」を立ち上げた。

 「主に中学生・高校生を対象として、海外の教室とオンラインでつなぎ、自分のことや学校、地域、趣味などについて話し、意見交換を行ってもらいます。例えば、地域の多様性について外国人と話したり、名古屋と海外の大学生が名古屋城や世界の文化遺産を紹介し合ったりするなど、さまざまなテーマで交流を深めています」

「教室から世界一周」プロジェクトによる、オンラインでの国際交流の様子

 現在では世界50か国150以上の団体と連携し、子どもたちに多様な世界を届けているが、実は事業を始めて早々に壁にぶつかっている。教育事業は一般的にマネタイズが難しいと言われており、「株式会社WTOC」も例外ではなかったのだ。

 「起業間もないころは、マネタイズについては真剣に考えておらず…。『いいことをしていればお金は後からついてくる』と本気で思ってがむしゃらに動いていたのですが、なんともならないことがわかりました(笑)。経営講座などで学ぶことで、事業内容も調整でき、今では見通しを立てて進めるようになっています」

 そして、2022年には「脱しあわせ迷子 -世界の幸福国を旅して集めた幸せのヒント-』を出版。これにより企業や学校、団体などから講演や授業に加え、執筆を依頼されることも増えたという。さらに大学の非常勤講師として毎年、大学生と「世界と幸せ」について対話をするほか、中学生に向けて「しあわせ講座」と題して書籍を活用した授業も行うなど、著書がきっかけとなる仕事も多い。

「〝幸せのヒントを探る〟をテーマに世界一周の旅をした結果、予想を超える多くの学びが得られました。この貴重な経験から私だからこそ気づけたこともあり、それを多くの人に伝えたいという思いで書籍にまとめました」と堂原さん

 「最近も著書を読んでくださった北海道幌加内町の教育長から、海外の視点を町の教育や政策に活かしたいとの相談があり。〝北海道の過疎地を救え!〟をテーマに、メキシコやコスタリカの生徒と日本の生徒が町の課題解決策を議論する場を設けました。〝雪の中での映画祭〟〝大晦日に日本一のそばを食べる〟といったユニークなアイデアが生まれ、メディア取材も入り、大きな反響を呼びました」

 さらに、この交流に参加した愛媛県の高校生が刺激を受け、地元の在日外国人を支援する団体に参加。自らイベントを企画し、メディアに取り上げられるなど、〝オンラインの教室〟からさらに一歩先へと発展していくケースも出てきた。

 「このように、私たちの活動をきっかけに海外への関心を高め、自ら行動を起こす若者が増えていることが何よりもうれしいです。留学や海外ボランティアに挑戦する中高生も増えており、今後も〝自分の意思で動き出す若者〟を育てていきたいと考えています」

 堂原さんが仕事のうえで掲げているミッションは、〝個性の数だけ、選択肢を〟。幸福国の旅で感じたように、誰もが自分の個性を見つけ、やりたいこと、好きなことに突き進んでほしいと考えている。この思いは子どもたちだけでなく、「株式会社WTOC」のスタッフに対しても同様で、「好きなこと、やりたいことをしてね」「楽しいことをしようね」と常に声をかけているそうだ。そんな彼女にとって、ライフシフトを経た今現在、幸せと感じるのはどんな瞬間なのだろうか。

 「〝自分が好きだと思って選び、作り出した仕事をしている〟という事実です。大好きな世界と関わり続けられることは、本当に幸せだと感じています。若いころは他人の意見に流されることも多かったからこそ、〝好きを選び取る幸せ〟を、事業を通して若い世代に伝えたいと強く思います。もちろん起業は大変ですが、自分の未来を自らの手で描けるものでもあるかなと。だから、これからも自分らしい道を切り拓いていきたいです」

 「教室から世界一周」という事業を全国に広げ、すべての子どもが異文化に触れられる機会を増やしたいという堂原さんにとって、個人の目標は世界2周目に挑戦すること。「世界中を旅しながら、今の仕事が続けられたらなんて幸せなんだろう、と妄想しています」。そう笑って話す彼女に、ライフシフトをしたいと感じている女性へのメッセージで締めくくってもらった。

 「やりたいことや思いがあるなら、ぜひ、今からでも動き出してほしいです。ただ、いきなり大きなことをするのはもちろん難しいので、情報収集でも、関係者に話を聞くでも、小さなことから始めてみてはいかがでしょうか。動いていると、必ず何かが見えてきます。自分の心の声に従って、〝真の幸せ〟に向かって動き出してほしいと思います」

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