運命の出会いが人生を大きくシフト!ミニチュア粘土から広がる新たな挑戦

文●杉山幸恵

  • お気に入り
  • 本文印刷

 手のひらに収まるほど小さなサイズのスイーツやパン、雑貨などを、特殊な粘土でつくりだすミニチュア粘土。そのかわいらしい世界観、つくる楽しさに魅了された相子麻美(あいこまみ)さんは、40代にして講師資格を取得して起業。「ミニチュア粘土教室」で多くの生徒やファンを獲得し、ついにはミニチュア粘土のつくり方を紹介する著書を出版するまでに。そんな相子さんは現在、ミニチュア粘土講師のほかにカメラマン、インフルエンサーとしても幅広く活動。そして、2025年からはハンドメイドコンサルタントとして法人化、新たなステージへと歩みを始めた。

ミニチュア粘土講師、カメラマン、インフルエンサーという自身の経験を生かして、ハンドメイドコンサルタントとしての道を邁進している相子さん

すべての画像を見る場合はこちら

ミニチュア粘土の教室を開講、ライフシフトのきっかけは「好き」という想いから

 青山学院女子短期大学でデザインを専攻し、総合商社や外資系IT企業に勤務していた相子さん。結婚、出産後も仕事は続けたが、子どもを幼稚園に入園させたかったために退職、それからは母親業をたっぷりと楽しんでいたという。そんなある日、相子さんに運命的な出会いが訪れる。

 「ママ友が制作されていたミニチュア粘土の作品に、『なんてかわいいの!』とひと目惚れ。小さなドーナツやパンを見て、こんな世界があるんだということを初めて知りました。今から20年ぐらい前のことです」

 その後、ママ友から紹介された先生のもとで技術を学ぶ傍ら、イベントでの販売やブログでの作品の発信を通じて少しずつファンを獲得。やがてファンから「ミニチュア粘土教室を開いてほしい」という声が上がるようになった。

 「その声を機に教室をスタートさせることに。〝あるあるの話〟なのですが、『やってください』と言っていた方は教室にはいらっしゃいませんでした(笑)。この時期、50件ほどの販売イベントに参加しており、今思うとその経験が〝作品を魅せる〟ということの土台づくりになったと、感じています」

ミニチュア粘土を4年間学んだのち、2009年に講師資格を取得した

 2012年に「Petit Amie mamie ミニチュア粘土教室」を開講。外資系IT企業では人事部で働いていた経験から、もともと人と関わるのが天職と感じていたという相子さん。「ミニチュア粘土の作品力に加え、人に教える力が備わっていたかと思います」と当時を振り返る。開講してわずか3か月目で収益がプラスになったが、そんな矢先に起こった出来事で、相子さんは気づきを得る。

 「外部のレンタルスペースを借りて開催していたのですが、たまたま祝日で、いつもの倍の料金がかかってしまい…。生徒さんも私も楽しく充実した時間を過ごせたものの、帰り道では何とも言えない虚しさを感じました。その時初めて、自分には経営の能力が欠けていることに気がついたのです。そこから学ぶ必要があると実感し、すぐに集客について勉強を始めました」

ミニチュア粘土教室はコロナ禍を機にオンラインレッスンへとシフト

 マーケティングを学んだことで開講1年目は1か月に10人に満たなかった生徒数が、2年目には約30人、3年目以降は平均して約40人、多い時で90人と右肩上がりに。順調にいっているかのように見えたが、安い料金設定で開講していたこともあり、思うようには売り上げを伸ばすことができなかった。

 「このころは生徒さんのレッスンに自身の新作づくり、ブログの発信と、めまぐるしい日々が続いていました。それなのに売り上げが上がらないのは、何かおかしいと思い始めて…。そこで起業塾で学び、ビジネスの基本を学ぶことにしたんです」

 起業時は売り上げにもさほど興味がなかったが、いろいろな経験や学びを重ねたことで、徐々に心境にも変化があったという相子さん。「最初は『起業するんだ!』と意気込んでいたわけでもなく、ゆるっと楽しいことができればという軽い気持ちでのスタートだったんですけどね」と笑う。ミニチュア粘土にビジネスとして向き合うことで、教室も軌道にのり、2017年には書籍「かんたん、かわいい! 粘土で作る素敵な世界」を出版するまでに。そして、さらなる自身の成長のために新たな行動に移す。

 「ブログなどで作品を発信するために、独学で身に付けた一眼レフで撮影していたのですが、作品をもっと魅力的に発信するためには撮影自体の技術が重要だと思い、プロから指導を受けることに。その方がポートレート専門のカメラマンだったので、作品だけでなく人物の撮影の仕方も習得できました。その過程で、教室のHPやSNSでは講師本人の魅力を伝える写真も大事だとわかったんです」

 「女性目線、そして教室業目線で撮影できるのは私の強み」と考えた相子さんは、2019年よりカメラマンとしても活動の幅を広げていく。プロフィールや作品の撮影に悩む作家向けのサポートも行うほか、ブランディングにつながるカメラ講座も開講。続けて2022年にはインスタ講座もスタートさせた。

 「長いこと放置していたInstagramを活用しようとしたのですが、自己流では難しいと感じたので、しっかりと学ぶことに。さらに、そこで得たものを、同じような悩みを持つ教室業の方も役立ててもらいたいと思い、インスタ講師も始めました。一見バラバラに見えるミニチュア粘土、カメラ、インスタですが、作家さんや先生方が撮影技術を身につけ、それをインスタで効果的に発信できるようになることで、販売や集客の好循環が生まれればと考えました」

カメラ講座の生徒の多くは、「自身の作品を魅力的に撮影したい」という講師や作家だそう

 Instagramを再開した相子さんは、さらにインフルエンサーとしての活動も始める。

 「私が受講したインスタ講座には、インフルエンサー向けのカリキュラムも含まれていました。興味はなかったものの、私自身が講座を開催する立場として試しに挑戦したのがきっかけです。すでにカメラマンでもあったため、企業から商品撮影の依頼が増え、次第に仕事が広がっていきました」

ハンドメイドコンサルタントへ転身、そして将来は〝旅するカメラマン〟に

ミニチュア粘土に心を奪われて起業、ここまで精力的に走り続けてきた相子さんだが、これからはハンドメイドコンサルタントを主軸に活動していくという。

 「私が開講していたインスタ講座では、売り上げ向上を目指し、マーケティングや商品設計についてもお伝えしてました。でも、3か月という短期間の講座だけでは、売り上げを伸ばすことに限界があり…。成果を出せるのは、すでにビジネスの基盤が整っている方が中心で、ITリテラシーが低い方には十分に伝えきれない部分もありました。

 フォロワーを増やすことは多くの方が達成されましたが、売り上げにつなげるには〝商品設計〟〝マーケティング〟〝マインド〟〝見せ方(撮影)〟の4つを整えることが重要だと実感。そこで、より幅広いサポートができるよう、ハンドメイド・教室業の方へのコンサルタント業という道を選びました」

 2025年1月には「Creative R株式会社」を設立。ハンドメイドコンサルタントとして「欲しいと言ってもらえる世界観の整った商品設計(作品作りや講座の設計)」「売り込まずして売れるためのマーケティング術・ライティング術」「ブレないマインド」「欲しいと一瞬で思ってもらうための写真術」「実際のセールスの仕方」「SNS活用法」などを伝えていくという。

 「社名の〝R〟には、人やアイデアを〝Respect(尊重) 〟すること、その価値を広げて新しい世界へ〝Reach(広げる)』〟こと、そして周囲に〝Radiance(輝き) 〟を届けることという想いを込めました。一人ひとりの可能性を大切にし、夢を現実へとつなぐ架け橋となれるよう、活動してまいります」

 ミニチュア粘土講師、カメラマン、インフルエンサーとしての肩書きを残しつつも、コンサルタントとして活動に注力していくという相子さんに、未来のビジョンも聞いてみた。

 「将来的には〝旅するカメラマン〟をしながら、好きな場所でコンサルタントとして活動していきたいです。今のように忙しく働くというよりは、人生を楽しみながら過ごしていきたいなぁと(笑)」

「生徒さまやお客さまに喜んでいただくことが一番の幸せです」と相子さん

 そう笑顔で答えてくれた相子さんに、ライフシフトをしたい、新しい一歩を踏み出したいという女性に向けてエールをもらった。

 「まずは好きなことを見つけること。好きなことなら続けられ、楽しいエネルギーが自然に広がります。スタート時に自信を持って始める人は少ないですし、それどころか自信がないばかりに始められない人も多いです。でも、その自信は自分との小さな約束を守ることで、必ずついてきます。例えば、週に2回インスタを投稿するなど、できることから始めましょう。そして、決めたことはやり切ることが大切です。

 また、自分がどうなりたいかをイメージすることがとっても重要です。誰かに遠慮せず、自分が心地よく楽しくなるよう、自身の心を満たしてください。そうすれば人にも思いやりが持て、幸せの循環を生み出すことができるはずです。誰かを幸せにする瞬間に立ち会えることは、人生の最大の喜びではないでしょうか」

すべての画像を見る場合はこちら

この記事の編集者は以下の記事もオススメしています

過去記事アーカイブ

2025年
01月
02月
03月
2024年
07月
08月
09月
10月
11月
12月
2023年
07月
09月
10月
11月
12月