覚えておきたいIPv6アドレスの種類や用途
IPv6は128bitあるため、そのうちの一部のビットを使って、アドレスの種類や用途を表すことができる。こうしたビットは、IPv6アドレスの先頭部分にある。以下の表は、主なIPv6アドレスの種類とパターンを示したものだ。
IPv6には、大きく3種類のアドレスがある。特定のホストを指す「ユニキャスト」アドレス、データの受信を希望する複数のホストへの宛先となる「マルチキャスト」アドレス、そして、「最も近い」ホスト1台に到達する「エニーキャスト」アドレスである。このうち、ユニキャストアドレスとエニーキャストアドレスは、アドレスのビットパターン上の区別がない。
IPv4では、マルチキャストアドレスは、「224.0.0.0」~「239.255.255.255」が使われたが、IPv6のマルチキャストアドレスは先頭プリフィックスが「ff00::/8」になっている。先頭が「ff」となっていたらマルチキャストアドレスである。
基本的には、ユニキャストアドレスのパターンだけを理解し、先頭がffなのはマルチキャストアドレスだと思えばよい。その中で、まず覚えておくべきなのは、先頭が「2」から始まるグローバルアドレスだ。プロバイダとの接続でIPoEなどを選択したとき、プロバイダが割り当てる「プリフィックス」の先頭が2になっているなら、インターネットからアクセス可能なグローバルアドレスである。
ただし、実際にアクセスが可能なのかどうかはルーター設定などに依存し、通常はルーターで外部からのアクセスをフィルター機能などで禁止している。
IPv4では、プライベートアドレスや特殊アドレス以外はグローバルアドレスだったので、IPv4アドレスをパッと見て、グローバルアドレスかどうかを判定できるなら、少なくとも素人レベルは脱している。しかしIPv6では、先頭アドレスさえ見れば、グローバルかどうかが簡単にわかる。
もう1つ覚えておくならリンクローカルアドレスで、こちらは「fe80」から始まる。MACアドレスを持つネットワークインターフェースには必ず定義されるので、IPv6アドレスを表示したときに必ず含まれる。
リンクローカルアドレスは、LAN内の通信には使えてもLAN外の通信には使えない。また、リンクローカルアドレスは、ネットワーク・インターフェースのMACアドレスをベースにしてインターフェースIDが決まるため、ネットワーク・インターフェースごとに定義される。
このため、リンクローカルアドレスには、対象となるネットワーク・インターフェースを区別するための「ゾーンインデックス」と呼ばれる情報をIPv6アドレスの後ろに「%」で区切っておく。ただし、ゾーンインデックスの表記方法はシステム側に任されており、Windowsの場合には、ネットワークアダプタが持つ「インターフェース・インデックス」(整数)を使う。Linuxなどではデバイス名(eth0など)を使う。
あとは、ループバックアドレスの「::1/128」がある。これは、IPv4でいう「127.0.0.1」に相当し、自分自身を表す。また、ルーティングなどで使うデフォルトルートは、IPv4では「0.0.0.0」を使うが、IPv6では「::/0」と表記する(プレフィックス長がゼロであることに注意)。
また、表記としてIPv4アドレスをIPv6形式で表現する「::ffff:0:0/96」ぐらいは記憶しておいた方がいいだろう。Windowsで自身のIPアドレスのうちどれを優先して使うのかは、「プリフィックスポリシー」で定められており、Windowsでは、レジストリまたはnetshコマンドで管理できる。現在のポリシーを見るだけなら、「netsh interface ipv6 show prefixpolicies」を実行すればよい。
このコマンドの出力では3番目の「::ffff:0:0/96」がIPv4アドレスを示す。これよりもIPv6アドレス(::1/128と::/0)の優先順位が高くなっているため、特に指定しないとIPv6アドレスを優先する。たとえば、pingコマンドも相手がIPv6アドレスを持っているなら、IPv6アドレスを宛先にする。
IPv4では、32bitのアドレス空間にさまざまな機能を詰め込んだため、アドレスが何を意味するのかを知るには、多数のルールを理解する必要があった。しかしIPv6では、「先頭部分でアドレスの種類や用途」を判別という簡単なルールのみでアドレスを理解できる。特殊アドレスの数は多いものの、すべてを理解する必要はなく、本文で解説した数個のアドレスパターンのみわかっていれば十分である。
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