「AWS Outposts」とは異なりフルサービス提供、1000ラック以上への拡張も容易に可能とアピール
最小3ラックで自社DCに“専用リージョン”設置、オラクルOCI「Dedicated Region25」発表
2024年09月17日 07時00分更新
米オラクルは2024年9月11日、Orace Cloud Infrastructure(OCI)の“顧客専用リージョン”を提供する「OCI Dedicated Region Cloud@Customer(DRCC)」の新たな構成として「Dedicated Region25」を発表した。最小構成が「3ラック」と従来版の4分の1になり、調達や設置、拡張も大幅にシンプル化された。提供開始は2025年中を予定している。
この発表が行われたオラクルの年次イベント「Oracle CloudWorld 2024」では、OCI担当幹部のクレイ・マグワイク氏による基調講演で、その特徴や顧客メリットが紹介された。
顧客DC内に配置してデータレジデンシーなどの問題を解消する「DRCC」
オラクルが2020年から提供しているDRCCは、フルマネージド型のプライベートクラウドソリューションだ。顧客データセンター(DC)内にOCIのサービスインフラ(ハードウェア、ソフトウェア)を配置し、それをオラクルが運用する形で、顧客専用のOCIリージョンを提供する。オラクルが推進する“分散クラウド(Distributed Cloud)戦略”の特徴的なソリューションの1つである。
「AWS Outposts」など他社の類似ソリューションとDRCCの大きな違いは、OCIがパブリックリージョンで提供しているすべてのサービス(現在は150サービス以上)を提供できる点だ。OCIのIaaS/PaaS(Autonomous Database、Generative AI Serviceなど)だけでなく、SaaS型ERPのOracle Fusion Cloud Applicationsも含めて、顧客は自社データセンターで提供されるサービスを利用できる。ちなみに、OCIのマネージドVMwareサービスである「Oracle Cloud VMWare Solution」にも対応している。またSLAは、OCIパブリックリージョンのそれと同一である。
DRCCの導入企業としては、日本の野村総合研究所(NRI)、英国のVodafone、オマーンのOICT Groupなどが公表されている。オラクルによると、2023年には10だったDRCCのリージョン数が、2024年には15に増加している。採用の理由としては、データを国内あるいは自社内に保持したい(データレジデンシー)、既存のオンプレミスシステムと低レイテンシで接続したい、データセンターのセキュリティレベルを統一したいといった、既存のパブリックリージョンでは満たせない要件を満たせることが大きいようだ。
Dedicated Region25は数千ラック規模のスケーラビリティ、導入や設定はより容易に
「Dedicated Region25では、従来のDRCCについて徹底的な再設計を行い、これまでにない柔軟性とスケーラビリティを実現した。引き続きリージョンの規模に関係なく完全な機能を提供する一方で、簡単に使えるようになっている」(マグワイク氏)
DRCCの最小構成は、2021年時点では50ラックだったが、2022年には12ラックまで引き下げられた。そして今回発表された、2025年版となるDedicated Region25では、それをさらに3ラックまで引き下げ、顧客企業がより導入しやすいフットプリントとなった(ただし最小価格については未発表)。
Dedicated Region25は、スモールスタートが可能な一方で、リソース需要に応じて拡張できる高いスケーラビリティも備えている。同一構成の標準化されたラックモジュールや拡張オプションを追加するだけでスケールアウトができ、64ラック、さらにはハイパースケールなリージョンに匹敵する数千ラック規模への拡張も可能だという。
Dedicated Region25は、顧客データセンターのサイトプランニング(電源、スペース、ネットワーク)を行った後、数週間で利用可能になる。ラック内のケーブルはすべて配線済みで工場出荷され、顧客データセンターではラック間のケーブル接続、ラックに付与されたQRコードのスキャン、リージョンとしてのアウトバウンドIPアドレス設定といったわずかな作業だけでデプロイできるという。
また、ネットワーク通信はすべて暗号化されており、一つひとつのラックが“ケージ”のような堅牢設計のため、構成するラックを隣り合わせに設置する必要がなく、データセンター内で空いたラックスペースを活用できることもアピールした。
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