1兆ドル規模に拡大するAI市場に向け、インテルがパートナーと決起集会
富士通、NTTデータがGaudiとNVIDIAのベンチを披露 Intel Connection 2024基調講演
2024年09月04日 07時00分更新
高性能でサステイナブルなAI環境を作っていきたい(NTTデータ)
2社目のゲストはNTTデータグループ 技術革新統括本部 グローバル技術戦略推進部長の吉田英嗣氏になる。
最初に説明したのは、大きいAIと小さいAIという分類。前者はわれわれが普段使っているChatGPTのような汎用的でパブリッククラウドで提供されているサービス。後者は特定のドメインに特化した生成AIで、業務やタスクに特化したAIを作ろうとすると、ファインチューニングとデータが必要になる。とはいえ、機密性の高いデータを扱おうとすると、オンプレミスやエッジでの利活用が多くなるという。吉田氏は、「大きいAIと小さいAIを適材適所で使っていくことが重要になってくる。将来的には、最適な生成AI環境を使えるだけではなく、ときには両社を組み合わせて使えることが必要」と語る。
NTTグループでは、小さいAIに向けたLLMとしてtsuzumiを開発している。NTTグループが40年に渡って培ってきた自然言語処理技術をベースにしたtsuzumiは、GPT-3の1/25となる70億パラメーターという軽量さを実現。一方、日本語性能でトップクラスの性能を実現し、高いカスタマイズ性やマルチモーダル対応などの特徴を持つ。
このtsuzumiを動かす環境として同社が目を付けたのがインテルのGaudiになる。「高性能で低消費電力」という環境を実現すべく、Gaudi 2の推論速度を検証したところ、NVIDIA A100に比べて2.9倍の性能を実現したという。
今後は消費電力の検証にフォーカスを当てる。吉田氏は、「クラウドだけでなく、エッジ、PC、スマホまで生成AIが使われるようになる。このとき一番大きい課題はやはり電力消費。ChatGPTの学習にかかる電力は、原発一基の数時間分(の発電量)と言われている。これではサステナブルな世界は実現できない。さまざまなデバイスに強いインテル様といっしょに高性能で省エネなサステイナブルなAI環境を作っていきたい」と、聴衆に向けても共創を呼びかけた。
経済インパクトは大きいが、留意点も多い企業でのAI活用
基調講演前半の最後は、有識者たちが集まる「政府や企業は日本を活性化するために生成AIをどのように活用していくべきか」を議論する「AIニッポン活性化戦略会議」の紹介。会議に参加しているマッキンゼーアンドカンパニー インコーポレーテッドジャパン シニアパートナーの野中賢二氏は、議論の一部を披露した。
AIニッポン活性化戦略会議での議論は、社会とAI、企業とAI、人とAIの大きく3つ。専門家を招へいしながら、エネルギーや人材の確保、個人のAIの向き合い方、法整備など幅広いトピックで議論を進めているという。
野中氏が紹介したのはマッキンゼーが作成した、日本における生成AIの経済インパクト。これは生産性改善だけで、GDP比5~8%となる26~45兆円に上るという。「すべての企業は1~2%程度営業利益が改善する程度の効果で、AIによるイノベーションや新しいサービスにつながれば、さらなる大きなインパクトが見込まれるという。
インパクトは業界のコスト総額、生成AIの影響の大きいファンクションのコスト割合が高いほど大きく、業界では小売やハイテク、銀行など、ファンクションとしてはマーケティング&セールス、ソフトウェアエンジニアリング、カスタマーオペレーションなどでの生産性改善の影響が大きいという。とはいえ、特定のドメインを決めて、徹底的にやらないと効果が出にくく、スケールさせるのが難しいのも事実。野中氏は「上場企業の8割くらいはPOCをやられているが、大規模にスケールさせ、P/Lにヒットさせるところまでやっているのは10%いかない」と語る。
野中氏は、AIニッポン活性化戦略会議の議論として、「事業インパクトにひも付くPOCに集中する」「コスト項目を正しく理解し、管理する」「事業価値創出ができるチーム」などの留意点を提示。「業務が変わったなと思えたり、AIの脅威に対して準備できる項目を、2つから4つくらい選んで、集中的にやることをオススメしているし、実際に議論の中でも出てきている」とコメントし、今後の議論や提言に期待してほしいとアピールした。
基調講演の後半も、多くのゲストが登壇し、次世代半導体の開発やスーパーコンピューターによるHPC、量子コンピューティングなどのトピックについてプレゼンテーションを披露した。イベントは4日も行なわれる。