Windows Insider ProgramでのWindows 11の状況
今回は、今秋のWindows 11のアップデートであるVer.24H2の状況をまとめる。まず、現在のプレビューだが、今回、これまでとは違って変則的なチャンネルの使い方になっている。
Windowsのプレビューを配布するWindows Insider Program(以下、WIP)には、4つのチャンネルがある。
Canaryチャンネル
Devチャンネル
Betaチャンネル
Release Previewチャンネル
WIPの参加者は、上記どれかのチャンネルを選択する。いずれもプレビュー版で、通常のWindows(ここでは通常版と表記する)に比べて、不安定だったり、不具合が生じる可能性があるが、後ろのものほど安定しているとされる。
まず、プレビューの配布状況は、「Flight Hub」(https://learn.microsoft.com/en-us/windows-insider/flight-hub/)で見ることができる(日本語版もあるが、更新が遅れるので英語版が確実)。もう1つ、通常版のアップデート履歴に関しては、「Windows 11 リリース情報」(https://learn.microsoft.com/ja-jp/windows/release-health/windows11-release-information、こちらは日本語)がある。
Windowsのバージョンよりも細かい違いを表すのがビルド番号だ。Windows付属のバージョン・アプレット・プログラムであるwinver.exeでは、「OSビルド」の名称で、ビルド番号とそのアップデートを区別する小数点以下の数字が使われている。
同じビルド番号でも、アップデートのたびに小数点以下の数字が増やされる。バージョンや小数点以下の数字を含むビルド番号は、以下のようにレジストリから読み込むことができる。LCUVerの「10.0.」の後ろがOSビルドになる。
Get-ItemProperty -Path "HKLM:\SOFTWARE\Microsoft\Windows NT\CurrentVersion" | select DisplayVersion,LCUVer
現在の状態が、以下の表である。
ここでは、Windows 11のみを対象とする。WIPでは、Windows 10のプレビューも進められているが、本記事では触れない。Canaryチャンネルは、特定のWindowsバージョンとは直接関係ないとされている。基本的には、次のWindows、直近のWindows 11 Ver.24H2より後のWindowsに入るであろう機能をプレビューする。
現在は、8月に開始された27000シリーズであるビルド27686が公開中だ。Devチャンネルは、今年2月にDevチャンネルと一回同じビルド(26052~26100)を配布し、CanaryチャンネルからDevチャンネルの移行を可能にした。4月にこの移行措置が終了し、Canaryチャンネルは26200から再スタートした。それが、8月15日にさらに27000シリーズになったようだ。
Devチャンネルは、もともとはCanaryチャンネルの位置づけであったが、現在では次のWindowsであるWindows 11 Ver.24H2のプレビューが進められている。前述のように、今年4月にCanaryチャンネルとDevチャンネルは移行措置を終えて分離した。
このとき、Devチャンネルでは、26100シリーズを配布することになった。現在は、ビルド26120が配布され、いまのところ小数点以下の数値のみアップデートされている。最新版は、26120.1542である。
Beta/Release Previewチャンネル
Betaチャンネルは、現行のWindows 11 Ver.23H2と22H2のアップデートのプレビューが提供されている。それぞれのビルド番号は、通常版と同じ22631(23H2用)、22621(22H2用)。これらは同じKB番号を持ち、リリースノートのページも同一である。ただし、新機能は23H2用のみだが、それ以外のバグ修正は共通だ。
現在のWindowsでは、次のバージョンへのアップデートは、通常版の累積的アップデートの中に分散されて配布されている。これにより、次のバージョンへのアップデート処理を簡単にし、アップデート時のオフライン(Windowsが動作していない状態)時間を短縮するためだ。
Betaチャンネルでプレビューされているのは、23H2に搭載される新機能だが、同時にそのアップデートには、22H2を23H2にアップデートするためのファイルなどが含まれている。ただし、同じアップデートを22H2に適用しても、新機能は“発現”しない。22H2から23H2へのアップデートを選択したときに、「有効化パッケージ」が適用されて23H2になる。つまり、現在の22H2は、ファイル構成的には23H2とほぼ同じだが、新機能が無効化されている状態である。
この22H2のサポート期限は、今年の10月8日。それまでは、Betaチャンネルは、22H2と23H2のアップデートをプレビューし続けるのではないかと考えられる。Windows 11 23H2では、毎回ではないがアップデートで新機能が追加されていく。そのため、プレビューをして、ユーザーに新機能を含め、アップデートされるWindowsでの検証時間を提供する必要がある。
この状況から考えると、現在の通常版(Windows 11 Ver.23H2)のアップデートには、まだ24H2のアップデートは含まれていないと考えられる。もし、24H2のアップデートが含まれているのであれば、そのアップデート過程や機能の状態を確認する必要があるからだ。そのためには、24H2のプレビューとして公開しなければならない。しかし、現在のBeta版には、そうした記載がない。
現在Betaチャンネルが対象としているWindows 11 Ver.22H2は、今年10月8日にサポートが終了する。ただちに利用不可とはならないが、少なくともアップデートの提供が停止する。これを考えると、Windows 11 Ver.24H2の通常版の完成(GA、General Availability)の前後から、Betaチャンネルで24H2と23H2のアップデートのプレビューが始まるのではないと考えられる。
Release Previewチャンネルは、現在23H2用と24H2の2つに分かれている。今年の1月以降にWIPに登録し、プレビューの受信を始めた場合、24H2のプレビューが配布されているはずだ。
この場合、ビルド番号は26100であり、小数点以下の数字のみ更新される。小数点以下の数字は、Devチャンネルで配布されている26120の小数点以下と連動しているようだ。このことを考えると、Windows 11 Ver 24H2には、ビルド番号として26100が与えられるのだと考えられる。
今年の1月以前にWIPに登録しRelease Previewチャンネルを選択した場合、23H2のアップデートが配布されているはずだ。この場合はビルド番号は22631のままになる。
変則的というのは、チャンネルの使い方だけではない。従来のDevチャンネルは、通常版に戻すときにデータを完全に消去するクリーンインストールが要求される。このままでは、24H2の正式版に到達したとき、Devチャンネルでは受け取れなくなる。
おそらく、Betaチャンネルでのプレビューが始まると同時に、DevチャンネルからBetaチャンネルに移行するための措置が実施されると思われる。
Windows 11 Ver.24H2の完成(GA)は、早ければ9月、遅くとも10月中で、その後すぐに通常版のアップデートが開始されるはずだ。前にも書いたが、Windows 12は当面出ることはなく、しばらくはWindows 11のままとして市場でのシェアを向上させるはずだ。
公式発表ではないが、原稿執筆時点でのWindows 11は、Windows 10よりもシェアが低いとされている。1つの目安は、2025年10月14日のWindows 10のサポート終了だろう。このあたりでのWindows 11のシェア状況が、Windows 12へのメジャーバージョンアップ可否の判断材料になる。
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