新横浜ラーメン博物館のウラ話 第49回

ラー博にまつわるエトセトラ Vol.43

ラーメン登龍門【第3位】手打ち麺 あお井 とら食堂直伝の“限定手打ち麺”

文●中野正博

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 みなさんこんにちは。新横浜ラーメン博物館30周年企画の一環として、2024年2月より、ラーメン職人の隠れた潜在能力や新たな才能を発掘するラーメンコンテスト「佐野実メモリアル ラーメン登龍門2024」を展開してまいりました。2024年6月2日(日)に最終選考(決勝戦)が開催され、上位3店舗がラー博に出店致します。

前回の記事はこちら:新横浜ラーメン博物館のウラ話 ラー博にまつわるエトセトラ Vol.42 博多ラーメンに旋風を巻き起こす"豚骨カプチーノ「博多一双」

過去の連載記事はこちら:新横浜ラーメン博物館のウラ話

 佐野実メモリアル ラーメン登龍門2024の概要につきましてはこちらをご参照ください。

 スタートは第3位となった「手打ち麺 あお井(From とら食堂福岡分店)」さんからの出店です!

【出店情報】
店舗名:手打ち麺 あお井(From とら食堂福岡分店)
出店期間:2024年7月5日(金)~15日(月・祝)
場所:新横浜ラーメン博物館 地下1階(旧八ちゃんラーメン)

 店主 和田 響(わだ ひびき)さんの経歴からご紹介いたします。

 1980年5月、神奈川県横浜市生まれ。大学1年の夏から(1999年~2001年)「一風堂 新横浜ラーメン博物館店」でアルバイトを始めます。

 ちなみに上記写真の左から2番目の方は、その後「麺の坊 砦 ラー博店」で店長を務め、2014年に「地球の中華そば」として独立された樋上正径さんです。

 大学卒業後の2003年に一風堂(株式会社力の源カンパニー)に入社。

 2005年には一風堂金沢香林坊店立ち上げの店長として配属。2010年には大名本店の店長となり、2011年社内暖簾分け制度により一風堂(株式会社力の源カンパニー)を退社し、株式会社日々輝を設立。暖簾分け店主として、一風堂薬院店を運営し、その後、一風堂金沢香林坊店(2013年)、一風堂横浜西口店(2015年)の暖簾分け店主となります。

~和田さんと「とら食堂福岡分店」の繋がりについて~

 一風堂の創業者 河原成美さんと、とら食堂本店の竹井和之さんが旧知の仲で、河原さんから福岡にも「とら食堂」を出してほしいという話から、竹井さんは自分たちは人手がいないので一風堂で人を出してくれるのであれば、ということで2016年「とら食堂福岡分店」が福岡市中央区六本松にオープンしました。

 このオープン時に和田響さんは関与していなかったのですが、響さんは「とら食堂福岡分店」で仕事をしたいという想いを河原さんに伝えていて、翌年の2017年、当時の店長が退職するのを機に、店長として働くこととなりました。

 そして2020年、河原さんより「とら食堂福岡分店」を自分の店としてやらないかという話があり、約10年間続いていた暖簾分け制度を辞退し、「とら食堂福岡分店」を受け継ぐこととなりました。

 コロナ禍の厳しい状況を切り抜け、現在「とら食堂福岡分店」は多くのお客様で賑わっています。

 和田さん曰く「毎日手打ち麺を作るのは大変ではありますが、充実した日々を過ごしているので、あの決断は自分にとって良かったと思っております」とのこと。

 今回出店する際の屋号は「手打ち麺 あお井」です。

 和田さん曰く「自分はとら食堂福岡分店という屋号で営業させていただいておりますが、今回とら食堂とは全く違うラーメンを出すため、誤解やご迷惑をおかけしないよう屋号を変えて出店します」とのこと。

 また「今回決勝が終わり、第3位になったことを家族に報告したところ、一番喜んでくれたのが娘でした。屋号をどうしようか考えていたところ娘から“私の名前(あおい)にして!”と言われ、そのままだとちょっと照れるので“あお井”としました。すぐには難しいですが、いずれこの屋号で福岡にお店を作りたいと思っております。」とのことです。

 さて第3位に選ばれたラーメンはどのような味なのか?和田さんに伺いました。

 今回のテーマが「国産小麦の風味と旨味を生かした味噌ラーメン」でしたので、まずは麺から考えました。

 やはり「とら食堂」の看板でやらせていただいているので、手打ち麺にこだわりました。手打ちでしか表現できない食感を味わっていただきたいです。

 味噌ラーメンなので力強いスープに負けない麺としてコシの強い国産小麦として「ゆめちから」、そして風味の良さとして「キタノカオリ」を選びました。加水(麺に加える水の量)も46%(気温や湿度によって変更)と多加水の麺で、3日間~4日間熟成させたものを使用します。

 新横浜ラーメン博物館はお客さんが多いので、全ての麺を打つことは出来ませんが、製麺室をお借りして1日120食は常にお出しします。それ以外の麺は機械製麺で作りますが、麺が変わるとスープも変わりますので機械製麺の麺も是非食べていただきたいです。

 スープは麺の原料である小麦同様、味噌の原料である大豆を活かすというコンセプトです。そこで郷土料理である「呉汁」からヒントを得て、スープを考えました。

 スープのベースはラーメンらしさを出したかったこともあり、しっかりと白濁させたとんこつで、大豆をすり鉢ですり潰し、白味噌と赤味噌をブレンド。背脂やバターを加えることにより、味噌汁っぽくならず、しっかりとラーメンを感じる深い味わいが愉しめます。

 食感にもこだわりました。すり潰した大豆もそうですが、すりごまも加え、具材もエリンギ、メンマを角切りにして、水菜や白ネギと様々な食感が味わえます。チャーシューは大判の肩ロース。彩に糸唐辛子をあしらいました。

 粘度のある濃厚なスープは麺の持ち上げが良く、コシの強い麺はスープに負けていません。手打ち特有の食感、エリンギとメンマのコリコリ感、水菜のしゃきしゃき感が相まった独特な味噌ラーメンに仕上がっています。

 筆者も食べましたが、新しいカタチの味噌ラーメンではないかと思います。手打ちの麺と呉汁からヒントを得たスープは想像を絶する相性です!

 最後に和田さんからメッセージです。

 優勝できなかったのは残念ではありますが、評価いただいたこと、そして、新横浜ラーメン博物館は自分がラーメンを始めるきっかけになった原点の場所ですので、いつか自分のお店として出店したいという夢も持っておりましたので感慨深いものがあります。11日間という短い期間ではありますが、1杯1杯魂を込めてラーメンを作りたいと思います。また期間中は、とら食堂本店や、一風堂時代の同僚や先輩も応援に駆けつけていただけるのは大変心強いですし、感謝しかありません。

 自分でいうのは手前味噌ですが、味わったことのない味噌ラーメンだと思いますので、是非この機会にお召し上がりいただきたいです。

【出店情報】
店舗名:手打ち麺 あお井(From とら食堂福岡分店)
出店期間:2024年7月5日(金)~15日(月・祝)
場所:新横浜ラーメン博物館 地下1階(旧八ちゃんラーメン)

 次回は準優勝に選ばれた「らーめん愉悦処 鏡花 八王子想庵」をご紹介いたします。

 お愉しみに!

新横浜ラーメン博物館公式HP
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文/中野正博

プロフィール
1974年生まれ。海外留学をきっかけに日本の食文化を海外に発信する仕事に就きたいと思い、1998年に新横浜ラーメン博物館に入社。日本の食文化としてのラーメンを世界に広げるべく、将来の夢は五大陸にラーメン博物館を立ち上げること。