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業界人の《ことば》から 第597回

危機感のなさを嘆くパナソニック楠見グループCEO、典型的な大企業病なのか?

2024年07月01日 08時00分更新

文● 大河原克行 編集●ASCII

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株価低迷に対する批判

 2024年6月24日、大阪・城見のホテルニューオータニ大阪で開催した同社第117回定時株主総会でも、パナソニックグループの現状に、株主から厳しい声が相次いだ。

 この1年で日経平均株価は上昇したものの、パナソニックホールディングスの株価は下落。PBR(株価純資産倍率)も1倍割れの状態が続いている。

 「経営者としての責任をどう考えているのか」との質問に対して、楠見グループCEOは、「PBRが1倍を割っている現状は、株主や社会からの期待に応えられていないという状況であり、重く受け止めている。結果を実績で示すとともに、投資領域での成長を実現し、株価やPBRの改善を図っていく。結果を出すことが、私の経営者としての責任である」と回答した。

 楠見グループCEOが取り組んでいるのは、パナソニックグループが持つ長年の課題の解決といえるかもしれない。

 楠見グループCEOは、「パナソニックグループが30年間成長してこなかったのは、上意下達の仕組みによって、売上げと利益を追求することが目的化してしまったことに原因がある」と指摘する。

 「事業が厳しくなると、売上げや販売台数の拡大を優先し、事業部長はそればかりを追いかける時代が続いた。その結果、上意下達の文化が浸透し、現場の人たちは言われたことをやるのが当たり前になり、自ら改善することや、自分で物事を考えることが減り、言われたことをやるのが仕事という大きな誤解が生まれるという悪循環につながった」

 典型的な大企業病の姿ともいえる。

赤字でなければいいのか?

 「かつての松下電器(現パナソニックグループ)は、競合にちょっと負けているだけでも大きな危機感があった。だが、いつの間にか、赤字でなければいいというような緩い危機感に変わっていった。その原因を探っていくと、長年に渡って、どこが悪いのかということを探することをしなかったり、なにを変えなくてはいけないのかといったことに手を入れてこなかったりした部分があった」と反省する。

 極端に業績が悪い事業には、撤退の判断をするなど、徹底した対策を実行してきたが、中途半端に悪いという水準の事業に対しては、手をつけないものが多かったという。これは、最近まで続いていたことであるとも明かす。

「この文化を変えなくてはならない。自主責任経営がパナソニックの経営の根幹であり、その文化を取り戻さなくてはならない。健全な危機感を、いかに復活させるかが鍵になる」と、楠見グループCEOは語る。

 そして、こうも語る。

 「パナソニックグループの目的は、お客様へのお役立ちを通じて、お客様に喜んでいただき、それによって適切な利益をいただくことである。これまでのパナソニックグループの取り組みは、本来の目的から、かけ離れたものになっていた。競合に対してシェアで勝っていても、利益で負けていたら、それはお客様に正しく価値が理解されず、受け入れられていないということであり、いずれシェアは落ちることになる。現在、置かれた状況をしっかりと見て、お客様にお役立ちをすることが大切である」

 「危機的状況」とするパナソニックグループのいまの体質を、根本から改善することができるか。「楠見改革」はこれからが本番というそうだ。

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