画像クレジット:Gogoro
台湾で1万カ所以上の電動スクーター向けバッテリー交換ステーションを展開するゴゴロのCEOは、バッテリーのネットワークをバーチャル発電所として活用するアイデアを語った。
この記事は米国版ニュースレターを一部再編集したものです。
台湾の都市を訪れたことがある人なら、緑と白の「ゴゴロ(Gogoro)」のバッテリー交換ステーションを目にしたことがあるだろう。台湾全土に1万2500か所のステーションを持つゴゴロは、電動スクーターのユーザーが空になったバッテリーと、フル充電されたバッテリーをすぐに交換できる、広範なネットワークを構築している。ゴゴロは台湾以外にも、中国やインドなど複数の国や地域で展開している。
台湾のゴゴロのバッテリー交換ネットワークが、今年4月に発生したマグニチュード7.4の地震後に、緊急停電にどのように対応したかについての記事を掲載した。私は、いかにして地震の3秒後に500か所以上のゴゴロのバッテリー交換拠点が送電網から電力を受けることを停止し、電力周波数の安定化に貢献したかを理解すべく、ゴゴロの共同創業者で最高経営責任者(CEO)を務めるホレイス・ルークに話を聞いた。
ゴゴロのバッテリー・ステーションは、いわゆるバーチャル発電所(VPP)のように機能したのだ。VPPは、再生可能エネルギーを送電網に組み込む方法として世界中で採用されつつある新しいアイデアだ。このシステムは、蓄電池や屋上の小型ソーラーパネルなどの分散型電源からエネルギーを取り込み、電力需要がピークに達したときに、それら電源を連係させて電力供給を増やす。その結果、従来の石炭や天然ガスを使った発電所への依存を減らすことができる。
また、バッテリー交換とバーチャル発電所といった技術の間には、実は自然な相乗効果がある。バッテリー交換ステーションは、充電のタイミングを送電網のニーズに合わせて調整できるだけでなく、ゴゴロのステーションに置いてある使用中でないバッテリーは、緊急時には予備のエネルギーとなり、送電網にエネルギーを供給することもできるのだ。このシステムの仕組みについてもっと知りたい方は、こちらで記事全文をお読みいただける。
この記事のためにゴゴロのルークCEOに話を聞いたとき、私は「バッテリーをVPPネットワークに使うというアイデアは、会社の歴史のどの時点で思いついたのですか?」と尋ねた。
驚いたことにルークCEOは「最初からです」と答えた。
彼の説明によると、ゴゴロは電動スクーターの会社としてではなく、「スマートエネルギー」の会社として創業した。
「私たちは、スマートエネルギーが、ポータビリティとコネクティビティによってさまざまなシナリオでの使用が可能になるかという仮説からスタートしました」とルークCEOは言う。「日常生活におけるエネルギー使用量の27%か28%を輸送分野が占めています」。ゴゴロが最初に二輪車用バッテリーを設計したのにはそういった理由がある。二輪車は、台湾をはじめアジア全域で人気のある交通手段である。
台湾でスクーターとバッテリー交換による充電方式の普及に成功したことで、同社はこのモジュール式ポータブルバッテリーの他の用途を模索することができるようになった。現在は140万本以上のバッテリーが流通している。
「プロパンガスのボンベのようなスマートでポータブルなコネクテッド・エネルギーを想像してください」とルークCEOは話す。ガスボンベは、その大きさにもよるが、野外での調理や中庭の暖房に使うことができる。リチウムバッテリーも同じようにモジュール化され、持ち運びができるようになれば、さまざまな用途に使えるようになる。
停電から送電網を守るVPPプログラムでの使用もその一例だが、それ以外にもゴゴロは新北市で現地政府と協力して、信号機用のエネルギー・バックアップ・ステーションを作り、同じバッテリーを使って、将来停電が起きたときに信号機の稼働を維持できるようにしている。さらにバッテリーは、病院をはじめとする重要な施設のバックアップ用蓄電池としても利用できる。停電が発生した場合、蓄電池はディーゼル発電機よりもはるかに早く電気を供給できるため、影響を最小限に抑えることができる。
バッテリーがよりパワフルで効率的になった最近の進歩なしには、このようなことは不可能であっただろう。そして、バッテリーのテクノロジーが歩んできた長い道のりや将来的により多くのエネルギーのユースケースに対応できる可能性といった私たちのやり取りから、ルークCEOがバッテリーに夢中になっていることは明らかだった。
「小さい頃、初めて懐中電灯を買ってもらったときのことを今でも覚えています。あのボタンで、小さな電球をつけたり消したりすることができました。そして、当時はそれが電池(バッテリー)のすごいところでした」とルークCEOは語る。「単三電池が電卓やウォークマンの電源になるなんて、誰も思っていませんでした。アルカリ電池を発明した人も、そんなことは考えもしなかったでしょう。私たちはこれからもその創造性をポータブル・エネルギーに応用していきます。そんな思いが私たちの日々の原動力になっています」。
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