立命館大学、森林研究・整備機構森林総合研究所、京都大学、国立環境研究所が参画する国際研究チームは、1900年から2050年までの生物多様性と生態系サービス(生態系から提供される人間の利益になる機能や資源)の変化を、複数のシミュレーションモデルと指標を用いて多面的に明らかにした。
立命館大学、森林研究・整備機構森林総合研究所、京都大学、国立環境研究所が参画する国際研究チームは、1900年から2050年までの生物多様性と生態系サービス(生態系から提供される人間の利益になる機能や資源)の変化を、複数のシミュレーションモデルと指標を用いて多面的に明らかにした。 研究チームは今回、1900年から2015年までの生物多様性、気候変動、土地利用に関する情報を再整理して再構築し、2015年から2050年までのシミュレーションの結果と組み合わせて、生物多様性と生態系サービスに関するモデル間比較分析を実施。社会経済状況と気候政策の実施強度、気候変動水準を組み合わせた3つのシナリオを準備して、(1)今後数十年間、土地利用と気候変動が生物多様性と生態系サービスに与える影響は、20世紀中における影響とどのように異なるか、(2)予測される影響のモデル結果間のばらつきのうち、シナリオの違いやモデル間の違いに起因するものはどの程度か、について調べた。 その結果、20世紀中に世界全体で生物多様性は2~11%減少し、生態系サービスについては受粉や栄養保持などの調整サービスは減少した一方、生態系からの食料や木材などの供給サービスは数倍に増加したことがわかった。将来については、健康的な食事への移行、土地の作物生産性の向上、追加的な環境保護政策の実施などの持続可能な発展に向けた対策は、生物多様性の損失を抑え、生態系サービスを向上させることが示された。 今後、持続可能な発展に向けた対策を進めると、生物多様性と生態系の調整サービスの減少を抑えられるが、対策をせずに今の速度で土地開発と気候変動が進むと生物多様性と生態系サービスへの悪影響は、今後も過去と同じ速度で継続することがわかった。研究チームによると、この結果は地球規模での持続可能な発展に向けた取り組みの重要性を示唆するものであるという。研究論文は、サイエンス(Science誌)に2024年4月25日付けでオンライン公開された。(中條)