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eSports王者がリアルレースに挑戦! 冨林勇佑選手のSUPER GT参戦記 第1回

グランツーリスモ王者の冨林勇佑がSUPER GTで新天地へ! メルセデスを駆りGT300の3シーズン目に挑む

2024年04月20日 12時00分更新

文● 吉田知弘 写真●加藤智充 編集●ASCII

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ついにGT3マシンに乗る冨林選手

 2024年のSUPER GTが4月13日、岡山国際サーキットで開幕。グランツーリスモ世界王者の冨林勇佑は今年もGT300クラスにエントリーしているが、チームは9号車「PACIFIC ぶいすぽっ NAC AMG」に移籍。決勝では不運なトラブルに見舞われてGT300クラス21位に終わるも、予選で速さを見せるなど、存在感あふれる走りを披露した。

SUPER GT

 昨年までマザーシャシーの86MCを使う5号車「マッハ車検 エアバスター MC86 マッハ号」で戦った冨林。デビューイヤーには表彰台を獲得するなど活躍を見せた。松井孝允と組んだ昨年は懸命の走りをみせるも、トラブルに泣かされることが多く、ノーポイントでシーズンを終えた。

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 迎えた3年目の今年は、Mercedes-AMG GT3を使う「PACIFIC RACING TEAM」に移籍。阪口亮平とコンビを組み、これまでとは違うGT3マシンでSUPER GTに臨む。車両特性は大幅に異なるものの、Mercedes-AMG GT3は冨林のルーツでもあるeスポーツ界では、様々なシミュレーターソフトに実装されているマシン。さらにスーパー耐久やGR86/BRZカップで培ってきた経験もプラスして、今シーズン中の表彰台、そして優勝を目指す。

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 開幕前のテストでは雨に見舞われるなど、安定したコンディションで走り込むことはできなかったが、Mercedes-AMG GT3のポテンシャルを体感し、かなり手応えを掴んでいる様子だった冨林。注目の開幕ラウンドを迎えた。

予選では会心のアタックで13番グリッドに

 今回の舞台となる岡山国際サーキットは、例年雨が降るなど寒さが厳しい1戦として知られている。ところが今回は予選日から気温25度に迫る夏ようなコンディションとなった。

左から阪口良平選手、冨林勇佑選手、藤原優汰選手

 またSUPER GTでは、今年から予選方式が変更となり、全社が順位に関わらずQ1とQ2に出走。その合算タイムでグリッドを決める。とはいえ、GT300クラスは台数が多いため、Q1結果で上位グループと下位グループに分けられてQ2が行なわれる。ポールポジションなど上位グリッドを獲得するためには、Q1各組のトップ8台以内に入らなければならない。

 その中で9号車はQ1Bグループに出走。阪口がアタックを担当したが、トップ8にわずかに届かず10番手。Q2は下位グループに回されることとなった。昨年までならQ1でノックアウトとなりQ2の出番はないのだが、今年の新ルールでは全車がQ2を走ることになるため、冨林にもアタックするチャンスが巡ってくる。その状況下で、グランツーリスモ世界王者が意地をみせた。

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 Q2の下位グループ予選で冨林は渾身の走りを披露。見事トップタイムを記録した。これで2人合わせて2分53秒439となった。今年の新予選ルールではQ2上位グループの13~16位(下4台)とQ2下位グループの1~4位(上4台)は合算タイム順で再度順位が並べ直される。冨林の頑張りもあり、この対象8台の中でトップになったことで、9号車は下位グループで最上位の13番グリッドを勝ち取った。

 なお、新方式の予選でのポールポジションは、スキのない走りで65号車「LEON PYRAMID AMG」が獲得した。

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LEON PYRAMID AMG

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左から蒲生尚弥選手、黒澤治樹監督、篠原拓朗選手

決勝レースはいきなりパンクが冨林を襲う

 日曜日の決勝レースはさらに暑さが厳しい1日となった。スタート時点で気温26度、路面温度は39度まで上昇。9号車は冨林がスタートドライバーを担当し、ポイント獲得を目指してスタートを切った。

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 レースは1周目からGT500クラスでアクシデントが続出する波乱の展開となり、いきなりセーフティカーが導入された。その時、力なくピットに戻る9号車が画面に映し出された。右リヤタイヤがパンクし、ホイールのリムから外れしまっている状態だった。

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 「誰とも接触していなくて……おそらく(他車のアクシデントで飛散した)破片を踏んだんじゃないか」と冨林。

 「決勝に向けてセッティングを大幅に変えたんですけど、1周目の途中から妙に砕ける動きが出ていて、セットを変えた影響かな? と思っていたんですけど、コの字(リボルバーコーナー、パイパーコーナー)を抜けたら真っ直ぐ走らなくなりました」と状況を語った。

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 チームはすぐにタイヤを変えて9号車を送り出す。幸いセーフティーカーが出たことで大幅なタイムロスはリセットすることができたものの、ピットレーンオープンの指示が出る前に緊急ピットインをしたこともあり、60秒のペナルティストップを受け、勝負権を失った。

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 それでも冨林は諦めずに周回を重ね、47周目にピットイン。最後は阪口がしっかりとゴールまでマシンを運び、トップから2周遅れの21位でチェッカーを受けた。

 「すごく良くしてくれて楽しいチームですし、戦闘力も底上げされているなと感じていいます。予選では下位グループに回ってしまいましたけど、速さは示せました。決勝を含めて、今回はいろいろ試せたし、速さは証明できたと思うので、とにかく次に繋がるレースにはなったとは思います」と冨林。

 すべての歯車が噛み合えばトップ争いができるというポテンシャルを感じているだけに、最後は「ちょっと悔しいですね」と本音が漏れていた。

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 今回は残念な結果となったが「流れが噛み合わない部分がありましたけど、シーズン中にどこかで絶対勝てるチャンスはあると思います。本当にランキングを意識できるようなチームだと思っています。僕自身もAMGに対して理解が深まった日でした」と、今後に向けて大きな収穫があったのは間違いなさそうだ。

 これまでとは一味違う冨林の走りがSUPER GTで見られるだろう。

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 2024年の開幕戦を制したのは、終始レースを支配し独自のペースで走り続けた2号車「muta Racing GR86 GT」だった。

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muta Racing GR86 GT

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左から加藤寛規監督、堤 優威選手、平良 響選手

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