東京大学の研究チームは、磁性半金属と呼ばれる特殊な強磁性体において、強磁性転移温度、磁気異方性、磁気輸送特性などの性質をゲート電圧で変調し、強磁性転移温度の大幅な上昇、磁気異方性の完全な切り替えなどの変化を観測することに成功した。
東京大学の研究チームは、磁性半金属と呼ばれる特殊な強磁性体において、強磁性転移温度、磁気異方性、磁気輸送特性などの性質をゲート電圧で変調し、強磁性転移温度の大幅な上昇、磁気異方性の完全な切り替えなどの変化を観測することに成功した。 電気が流れる磁性体の研究は、スピントロニクスデバイスへの応用展開の可能性から注目されている。研究チームは今回、磁性半金属であることが最近明らかになったテルル化クロムという物質系に着目。ゲート電圧を細かく変化させることでテルル化クロム中に存在する伝導電子の数を精密に制御したところ、強磁性転移温度の大幅な上昇や、面直磁気異方性と面内磁気異方性の完全な切り替え、さらには異常ホール効果と呼ばれる磁気輸送現象の符号反転などの劇的な変化が観測された。 磁性のゲート電圧による変調は、これまで主に半導体に磁性イオンを添加して作られる希薄磁性半導体や鉄に代表される金属磁性体で実現されている。磁性半金属を用いた磁性体ゲートデバイスでは、磁性半金属は存在が希少ということもあり、そのような研究はほとんど実施されてこなかったという。 研究論文は、サイエンス・アドバンシス(Science Advances)のオンライン版に2024年4月12日付けで掲載された。(中條)