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AIは漫画家の玉手箱なのか……

実録:AIで描く漫画の実際 ~体験して見えた、その実力と課題!!

2024年04月22日 20時00分更新

文● 野火城 編集●ASCII

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漫画へのAI使用で便利だと思った事

・カラーが速い
 自分がカラーが遅いのもありますが、カラー漫画を作りたいのであれば圧倒的にAIの方が速いです。カラーで生成されるので、当たり前と言えば当たり前ですね。特に全面カラーのWEBTOONなどと相性が良さそうです。

・i2i(image to image)
 前まであまり恩恵を感じなかったのですが、DALL・E 3生成→SDXLの低デノイズ変換は大変便利でした。DALL・E 3はプロンプトの通りはいいのですが少し絵柄が古いため「ちょっとだけ今風の画風」に寄せるのにSDXLモデルが大活躍。カラーもですが、モデルを選べば白黒も中々上手く「ちょっとだけ今風のグレスケ」に変換してくれます。

 この使い方ならば基本の絵は元画像から変わらないので、色々と応用ができそうです。コントロールネットでも同じ事はできると思いますが、時短+手軽さで言えばi2iでしょう。

・背景が一瞬で終わる
 画像生成AIが出てからずっと、漫画補助に使うならこれが一番の利点だろうと思っています。時代物や現代ものなどは破綻が目立つためそのまま生かせるかはジャンルによりますが、自然物や遠景、あまり大きくない小さなコマの背景などはほぼAIでいけるでしょう。背景を描いてもらうだけなら難しいプロンプト構築もそこまで要りません。初心者でもすぐにできます。

 ただAIの背景は必要以上に細かい事が多い。細かくならないよう簡素化するLoRAなどもありますが、大体そういうものは「全部が簡素」になってしまう。もっと細かい所と簡素な所のバランス、つまり情報量の整理が上手く、かつ破綻の無い背景を描けるようになって欲しいです。

よく見ると細かい部分が破綻していますが、小さなコマの背景などはほぼAIに任せられそう

・白黒自分絵LoRA
 自分の白黒絵でSDXLのLoRAを作ったんですが、自分絵に寄せると言うより白黒線画化に便利でした。全て0.3くらいで軽めにかけてます。

 強めにかけると破綻も増えますが自分の絵の特徴や癖などが出てくるので、自分の絵が他人からどう見えるのかの客観視点が得られ、勉強になります。

漫画へのAI使用で向かないと思った事

・白黒漫画
 前は白黒の方が加筆が楽だし簡単だろうと思っていましたが、カラー漫画と白黒漫画両方作ってみたところ、最近のモデルだとカラーの方がキャラクターの整合性が取りやすいとわかりました。「緑の着物」ならそこまで色がブレないのですが「グレーの着物」だとかなり色調がブレます。

 まずAIはあまり白黒絵が得意ではありません。出来ない事はないのですが、実用に耐えるものにするにはそこそこ加工が必要になるためそこまで時短にならないです。プロンプトだけでは漫画に必要な細かい演技指定もできませんし、描ける方ならキャラは手で描いた方が速いでしょう。

 今のところ、少なくとも自分はAI実験以外で白黒漫画のキャラをAIに描かせたいとは思いません。単純に効率が悪いからです。まだAIより3D素体をLT変換で線画化して加筆した方が速いし正確です。白黒キャラ生成で有用なのは細かい演技指定を必要としないモブでしょう。ようは、やはり背景です。

「グレーの着物」を指定するとかなり色調がブレるため、加工が必要になります。白黒漫画でメインキャラクターをAI生成する場合は、あまり時短にならないという結果に

・コントロールネット
 下絵を用意して入れ込んだり、その時々で適切な数値を試さねばならないなど、設定に手間がかかるのと、SDXLのコントロールネットを使用すると生成の質が落ちがちだからです。最近は生成速度を上げる方法も色々ありますし、よっぽど特殊なポーズでもない限り、コントロールネットを設定する時間でプロンプトでガンガン生成した方が希望の絵が出たりします。

 描ける人であれば、プロンプトでポン出しを加工した方がいいでしょう。今回はそういうシーンがありませんでしたが、複数人の絡みのポーズを入れたい場合などには有効かもしれません。

※あくまで漫画への活用の話なので、イラストだとまた話は違ってくると思います。

自分がなぜAI実験をしているか

 始めにお話した通り生成AIには様々な意見がありますが、一度技術として確立した以上、今後生成AIが完全に消える事はないと考えています。ならば、これがどういうものなのか、良い所も悪い所も、実際に自分で使って知りたいと思いました。良い部分は活用したいし、悪い部分は正しく怖がり、どのように対策したらいいのか考えたいからです。

 とりあえず自分は以下を守って使うよう心がけています。

・日本の法律で違法になる事はしない
・手描きでやって駄目な事はAIでやるのも駄目

 画像生成AIは万能ではありませんが、その進化速度は目を見張るものがあります。そして実際自分で触って使用してみないと、どのように有用でどのように危険なのか「感覚」が掴めません。ただ知識を得るだけではわからない事が多々あります。

 生成AIで著作権問題が表出するかは、現在の法律では学習でなく生成結果で判断されます。もちろんディープフェイクが簡単に作れてしまう、著作権問題とは異なるSD1.5系へのNAIリークモデルの混入など、今の画像AIは様々なリスクや問題があり、使う側のモラルを高める必要性を強く感じます。

 自分は、万が一今後Stable Diffusionなどの画像生成AIの使用が日本の法で全面禁止されたら使用をやめます。自分が生成AIを使っているのは、あくまで日本の法律で許可されているからです。

 今後も出来る限り最新のAI情報をチェックし、その時々で使用するか否か判断していくつもりです。

野火城

 アナログ時代から漫画を描いてきたクリエイター。漫画の補助としてAIをどう使えるか実験中。X(Twitter)で生成AIを使用した漫画「AIずきん」を公開し、3万件を超える「いいね」が集まる。

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