今年のホンダはNSXからシビックに変更!
4月14日に開幕する日本最大のレースイベント「AUTOBACS SUPER GT 2024 SERIES」、通称SUPER GT。開幕に先駆け公式テストが、岡山国際サーキットと富士スピードウェイで行なわれた。この先行テストでは、今年から変わる予選方法のシミュレーションなども行なわれ、見る側にとっても充実したテストとなった。そこから見えてきた今シーズンの見どころを紹介しようと思う。
まず上位クラスのGT500だが、ホンダが97年から参戦(途中3年間はHSV-010を使用)してきたNSX-GTからCIVIC TYPE-R GTにマシンをスイッチした。フラッグシップモデルのNSXから、最後と噂される高性能レシプロエンジン搭載のCIVICへのチェンジは、ホンダの決意を感じさせる。今回のテストでは、ホンダの本気が垣間見れた。
対するトヨタとニッサンは、スープラとフェアレディZを続投。さらなる熟成で新生ホンダを迎え撃つカタチだ。GT500クラスは、メーカーが威信をかけて戦っているだけあって、常に緊張感のあるレースを見せてくれる。
GT300クラスには2台のフェラーリが参戦! 女性ドライバーも
一方GT300は、グローバルスタンダードとも言えるGT3車両がメインとなっているクラスだ。国産としてはホンダ、ニッサン、トヨタ、レクサスに加えスバルが参戦している。そして海外メーカーはMercedes-AMG、BMW、ランボルギーニ、アストンマーチン、フェラーリといったスーパーカーがエントリーしている。特に今シーズンは、2台のフェラーリの参戦が話題だ。
数あるGT3車両の中でもフェラーリ「296 GT3」は、デキが良いとされるモデルで、実際走っても速い。耐久性においてもル・マン24時間レースをはじめとする、WEC(世界耐久選手権)シリーズで活躍しているマシンだ。そこにフェラーリのワークスドライバーであり女性のリル・ワドゥー選手の参戦が決まっている。ワドゥー選手はWEC推薦ドライバーに選出され、女性ドライバーとして初めてル・マンハイパーカーをドライブした実力の持ち主だ。
ミシュランがGT500から撤退! ますます激戦になるタイヤ戦争
マシン同様、タイヤ戦争でもあるSUPER GTだが、供給されるタイヤに動きがあった。昨年までGT500クラスにも供給していたミシュランが、GT500から撤退しGT300クラスに専念するとのこと。そのミシュランタイヤが、ウェットコンディションで圧倒的な強さを見せたのだ。
ミシュランをチョイスしたのは7号車(BMW M Team Studie x CRS)、20号車(SHADE RACING)、45号車(PONOS RACING)の3チーム。車種もBMW M4 GT3、GR86 GT、FERRARI 296 GT3とバラエティに富んでいる。
その中でもTeam StudieのBMW M4 GT3が、ウェットコンデションでバツグンの速さを見せ、岡山、富士ともにトップタイムをマークした。低速の岡山と高速の富士の両サーキットでトップタイムと言うことは、ウェットでは敵なし状態だろう。BMW M Team Studie x CRSは、今年のGT300クラスを大いに盛り上げてくれそうだ。
予選方法の変更により2人とも速いドライバーが求められる
そして今シーズンの予選方法が、昨シーズンまでとは大きく変わったことも話題だ。昨年まではQ1(Qualifying1、予選1回目)とQ2(Qualifying2、予選2回目)に分け、Q1を全車でタイムアタック。その後、2グループにわけられるGT300クラスは各上位8台(16台)、GT500クラスは上位8台がQ2に進み、ポールポジションを争った。
今シーズンのルールは、予選の順位を2名のドライバーの合算タイムで競う形となった。GT500クラスはQ1、Q2の結果からグリッド順位が決まるというシンプルなものだが、GT300クラスがちょっとややこしい。
GT300クラスは従来どおり2グループでQ1を争うが、Q1のそれぞれ上位8台(16台)がQ2 グループ1に、それ以下のチームはQ2 グループ2として分けられ、、再び全車両がQ2でタイムアタックをする。その結果からQ2グループ1の上位12台のグリッドと、Q2グループ2の21番手以下のグリッドが決まる。
さらに、Q2グループ1の下位4台とQ2グループ2の上位4台はタイム次第で入れ替わることもある。したがって、Q2 グループ2になったとしても最高で13番グリッドを狙えるチャンスがあるし、Q2 グループ1でも20番グリッドまで落ちることもある。
つまり、ポールポジションを獲得するにはQ2グループ1に入るのが絶対条件であり、Q2グループ1に入れたとしても、タイム次第では13~20番手のいずれかになるということ。例年以上にQ1での結果が大切になるのだ。
GT500クラスもGT300クラスも、全ドライバーがタイムアタックを行なうので、2人のドライバーのタイムを高いレベルで揃えなければならない。昨年まではQ1で敗退したマシンはQ2を走らなかったが、今年は全車両が両方の予選を走るため、ファンとしてはうれしいだろう。
さらに細かいルールだが、Q1、Q2通して使用できるタイヤが1セットのみになり、このタイヤで決勝レースをスタートする。予選1~3位には3~1ポイントが与えられるようになったので、予選の順位はチャンピオンシップに大きく影響を与えるだろう。ドライバーはタイヤマネジメントをしつつ、タイムを出さないといけなくなったのだ。
岡山国際サーキットのテストでは、TGR TEAM au TOM'Sの坪井翔/山下健太組が最速合算ラップを記録。富士スピードウェイのテストではARTAの野尻智紀/松下信治組が、今シーズンから投入されたARTA MUGEN CIVIC TYPE-R GTで最速タイムを記録した。最速タイムとは言え、日産の2台も常に上位につけ、3メーカーが1秒以内に収まる接戦だ。
予選方法が変わってもSUPER GTの激戦ぶりは、変わらないどころか、より一層激しさを増しそうだ。
■筆者紹介───折原弘之
1963年1月1日生まれ。埼玉県出身。東京写真学校入学後、オートバイ雑誌「プレイライダー」にアルバイトとして勤務。全日本モトクロス、ロードレースを中心に活動。1983年に「グランプリイラストレイテッド」誌にスタッフフォトグラファーとして参加。同誌の創設者である坪内氏に師事。89年に独立。フリーランスとして、MotoGP、F1GPを撮影。2012年より日本でレース撮影を開始する。
■写真集
3444 片山右京写真集
快速のクロニクル
7人のF1フォトグラファー
■写真展
The Eddge (F1、MotoGP写真展)Canonサロン
Winter Heat (W杯スキー写真展)エスパスタグホイヤー
Emotions(F1写真展)Canonサロン