今回のひとこと
「脱炭素と資源循環、環境技術開発において、2030年までに1000億円を投資する。だが、エプソンのほとんどの商品やサービスが環境負荷の低減に貢献するため、これらも環境投資と捉えれば、10年間で1兆円を超える投資規模になる。後半偏重だが、投資は順調に進めている」
セイコーエプソンは、「環境」への取り組みを重点戦略に据えている。
2050年にカーボンマイナスと、地下資源消費ゼロの達成を目指す「環境ビジョン2050」を打ち出す一方、現在取り組んでいる長期ビジョン「Epson 25 Renewed」では、3つの柱として、「環境」、「DX」、「共創」を重要なテーマに掲げ、「環境」においては、「脱炭素」、「資源循環」、「お客様のもとでの環境負荷低減」、「環境技術開発」の4点から環境戦略に取り組んでいるところだ。
セイコーエプソンの小川恭範社長は、「商品・サービスや製造工程における脱炭素と、資源循環、環境技術開発において、2030年までに1000億円を投資する」と語る。
現在までの投資の進捗状況については明らかにはしていないが、「後半偏重にはなるが、投資は順調に進んでいる」と語り、すでにいくつかの成果があがっていることを示す。
たとえば、2023年12月時点で、エプソングループが持つ世界中のすべての拠点において、使用する電力を100%再生可能エネルギーに転換。これは、RE100加盟企業における国内製造業では初めての達成になったという。
製品やサービスにおいても、環境戦略が浸透している。
「資源循環」という観点では、2023年2月から、商業向けプリンタの一部で再整備プログラムを開始したのに続き、2023年4月からはリファービッシュ品の提供を開始している。さらに、リファービッシュ品の販売は、一部プリンタやプロジェクター、パソコンなどにも展開しており、同社サイトなどを通じて特別価格で販売している。
リファービッシュ品とは、初期不良品や無料貸し出しプログラムによる貸出機、展示会などで短期間使用した商品などから、状態の良いものを再整備し、通常品同等の品質に生まれ変わらせたもので、通常品と同じく1年間のメーカー保証がついている。インクジェットプリンタの場合、新品に比べて25%ほど安く購入でき、PCでは最大約29%安く購入ができるモデルも用意している。
また、オフィス内で廃棄された紙を再生紙として利用することができる乾式オフィス製紙機「PaperLab」では、2023年12月には新たなプロトタイプを発表。本体サイズを約50%小型化し、本体価格も約半分に低減。オフィス空間に馴染むシンプルなデザインを採用し、オフィスにおける紙循環が行いやすい提案を進めている。
エプソン販売でも、「資源循環」や「お客様のもとでの環境負荷低減」に向けた取り組みを行っている。
家庭向けインクジェットプリンタでは、5年間に渡る安心サポートにより、故障しても修理をして使い続ける提案を行う「カラリオスマイルPlus」の累計販売数が11万6000件に達したという。修理費用を全額サポートするプランと、半額サポートするプランを用意し、修理対象に落下破損、水こぼし、火災、落雷などの物損にも拡大。さらに廃インクメンテナンスエラー発生時も無償での交換や、自宅まで商品引き取り、利用回数の制限なしといった特徴を持つ。プリンタの買い替え時に、手元に未開封の純正インクカートリッジが残っていた場合には、1個あたりエプソンダイレクトショップ300ポイントと交換できるといったサービスも付加している。サービスに対する顧客満足度は70.7%と高く、環境意識の高いユーザーからの購入が多いという。
また、有償テストマーケティングという手法を用いて取り組んでいるのが月額サブスクリプション方式の「ReadyPrint」である。プリンタを貸し出し、インクが無くなる前にインクを自動配送し、故障時の無償交換にも応じるというものだ。初期費用3000円、月額800円の月間上限枚数50枚プランなど、A4モデル、A3モデルを含めて、6つのプランを用意している。2014年1月30日~5月13日の期間に、4回に渡ってテストマーケティングを実施しており、各回100人ずつの参加を募集している。現在、3回目の募集を行っているところだ。エプソン販売の鈴村文徳は、「ビジネスモデルの転換のひとつとして取り組んでいる」と位置づける。
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