当たり前だけれど、いつしか忘れかけていた大切なこと
なお、散歩しながら考えるという方もいらっしゃるだろうが、最初の30分間では、まだ頭が整理されないようだ。40分、50分と歩くうちに血の巡りがよくなっていき、ようやく頭のなかを覆う靄、すなわちリーセントメモリー(最近記憶)が取れてきて、頭の奥で眠っていたものが顔を出すというのだ。
ここまで来ると散歩の本領である。思いがけないことを考えついたり、思い出したり、連想したり、おもしろい。散歩をするのなら、少なくとも三十分は、ウォーミングアップとしてカウントしないでおく。そこから先の時間で、思いついたものが独自の思考といえる。(260ページより)
したがって短時間ではなく、最低でも1時間は散歩したいということ。1時間も散歩する時間をつくることは決して楽ではないし、それは外山さんも認めている。が、ものは考えようだ。
「長時間の散歩は無理」という情報が当然のこととして刷り込まれているかもしれないが、通勤時などを利用すれば意外と歩けるものだからだ。よくいわれるように、最寄りの駅のひとつ前で降りて歩くのもいいだろう。
たとえばこのように、「当たり前だけれど、いつしか忘れかけていた大切なこと」を本書は改めて思い出させてくれる。忙しい毎日が続くからこそ、ときどき意識的に立ち止まり、ページをめくってみるといいかもしれない。
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新版 思考の整理学 (ちくま文庫 と-1-11)外山 滋比古筑摩書房
筆者紹介:印南敦史

作家、書評家。株式会社アンビエンス代表取締役。
1962年、東京都生まれ。
「ライフハッカー[日本版]」「ニューズウィーク日本版」「東洋経済オンライン」「サライ.jp」「マイナビニュース」などで書評欄を担当し、年間700冊以上の読書量を誇る。
著書に『遅読家のための読書術』(PHP文庫)、『いま自分に必要なビジネススキルが1テーマ3冊で身につく本』(日本実業出版社)、『書評の仕事』(ワニブックスPLUS新書)、『読書する家族のつくりかた 親子で本好きになる25のゲームメソッド』『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(以上、星海社新書)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)、などのほか、音楽関連の書籍やエッセイなども多数。

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