いまさら強調するまでもなく、外山滋比古さんといえば“知の巨人”として知られる英文学者、文学博士、評論家、エッセイスト。専門の英文学を筆頭として、日本語、教育、意味論などさまざまな分野を横断する評論やエッセイは、2020年7月の逝去後も長く支持されている。
著作も多いが、なかでも圧倒的な支持を得ているのが、1983年に「ちくまセミナー」シリーズの1冊として刊行された『思考の整理学』だ。1986年には文庫化され、以後21年間で16万部を誇るロングセラーとなった。
さらに2007年には、岩手県盛岡市の書店の手描きPOPがきっかけとなって再評価を受けることに。その翌年には東大(本郷書籍部)・京大生協の書籍販売ランキングで1位を獲得したこともあり、「東大・京大で1番読まれた本」として以後も部数を伸ばした。
そこまで広く受け入れられることになったのは、豊富な知識をわかりやすく解説したアプローチが魅力的であるからにほかならない。難しいことを難しく書くのは簡単だが、誰にでもわかるよう簡潔に表現することは実のところ難しいものだ。しかし、それを見事に実現しているからこそ、287万部を突破した普遍的ベストセラーとなったのである。
『ワイド新版 思考の整理学』(筑摩書房)は、そんな同書の増補改訂版。手にとりやすい四六判で、既存の文庫版よりも活字のサイズが大きくなっているため、非常に読みやすいつくりになっている。「細かい文字を追うのが面倒で……」という方も、これなら無理なく読めるだろう。
もうひとつの魅力は、2009年に東京大学で実施された特別講義が「新しい頭の使い方――『思考の整理学』を読んだみなさんへ伝えたいこと」として新たに加えられている点だ。そのため、「『思考の整理学』なら何度も読んだよ」という方でも新鮮に読み進めることができる。
今回はそのなかから、「情報社会に溺れない方法」をクローズアップしてみたい。
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