GMO学術サポート&テクノロジーは3月12日、富士通のクラウドサービス群「Fujitsu Computing as a Service」(CaaS)上でスーパーコンピューター「富岳」の研究成果を実用化するサービスを3月1日より提供開始したことを発表した。
今回展開するサービスは、GMO学術サポート&テクノロジーが富岳で研究開発したソフトやデータをCaaS上に実装し、研究者に対してハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)を活用した膨大な脳MRIデータの解析環境を提供するもの。本サービスは、2023年10月~2024年2月に理化学研究所の生命機能科学研究センター脳コネクトミクスイメージングチームにより実証実験でも利用され、今後脳MRIを用いた精神神経疾患の自動診断の実現などに貢献することが期待されている。
近年、MRIで得られた脳画像ビッグデータの解析と臨床応用を推進する研究プロジェクトが世界各国で進められており、文部科学省は、3月から研究期間6年をかけて認知症治療薬などの開発に取り組む「脳神経科学統合プログラム」を創設した。このプログラムを通じ、病態の予測ができるデジタル空間上の脳モデルの開発や、研究基盤としての「デジタル脳」の整備などが期待されている。しかし、MRIで取得された生データ(磁気共鳴信号)をさまざまな解析目的に合わせた画像データに変換するには膨大な前処理解析が必要となり、これが大規模解析のネックとなっている。
そのような中、AIやビッグデータを用いた医療分野の研究開発支援や、富岳などのHPCを用いた医療ビッグデータの大規模解析に関する研究開発に取り組んできたGMO学術サポート&テクノロジーが、富士通のパートナープログラム「Fujitsu Accelerator Program for CaaS」に参画し、両社の持つ技術を組み合わせ新しい価値を共創したことで本サービス提供の実現に至った。
本サービスにおいてGMO学術サポート&テクノロジーは、研究者が容易かつ高速に脳MRI解析AIを開発するために、前処理を事前に施したオープンデータならびにクローズドデータに前処理を施す解析環境を提供する。
この前処理機能は、解析目的に合わせて、動きや歪みの補正、ノイズ低減などの加工をするもので、従来2年かかるとされていた数千人の患者の脳MRIのデータ処理時間を2日間に短縮した富岳の研究成果を活用。CaaS上で富岳と同様に現実的な時間でデータ処理を完了でき、その後のAI開発にスムーズに着手できるという。
本取り組みは、富岳で研究開発したソフトウェアやデータをCaaS上に実装し、サービス利用者に提供する初事例となる。従来は富岳の成果をサービスとして提供する環境がなかったため、富岳の成果が社会実装されるまでには多くの期間や工数を必要としていた。CaaSは富岳と同じCPU「A64FX」を採用しているため、富岳で利用していたソフトウェアやデータをそのまま利用できる。
今回提供開始した脳MRIデータの前処理については、事前に前処理済みのデータや利用環境を整備した上で提供するため、利用者はGMO学術サポート&テクノロジーがCaaS上に構築する解析環境にアクセスすれば即座に利用できる。
GMO学術サポート&テクノロジーは今後、脳MRIデータ解析やAI自動診断をはじめとする各種アプリの開発者や研究者に向けた利用環境を構築していく。