ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第761回
Intel 14Aの量産は2年遅れの2028年? 半導体生産2位を目指すインテル インテル CPUロードマップ
2024年03月04日 12時00分更新
新工場Ohioの稼働開始は2026年末
するとIntel 14Aの本格量産は2027年以降か?
もう1つ、これは具体的にどの工場がどのノードの生産を担うかを示したもので、Intel 18Aまではほぼ既定路線といった感じであまり珍しさはない。Intel 14AとIntel 10Aは当然ながらまだ記されていない。普通に考えれば現在建設中のOhioがこのIntel 14A/10Aの生産を担う感じになるのだろう。
そのOhio、2月1日のロイターの報道によれば建設が遅れており、稼働開始は2026年末になりそうで、前頁最後の画像左側のグラフとつじつまが合わない。Intel 14Aも当初はD1でまずパイロット生産が始まり、Ohioが稼働する2027年以降に本格量産、ということなのかもしれない。
あと直接関係ない話題だが、昨年のクリスマスシーズンにASMLから出荷されたHigh NAのEUV ステッパーであるが、これが到着して据え付けが行われている動画が公開された。
39秒あたりからのクリーンルーム設置の様子を見ていただければ、いかにEUVステッパーが大きいかがわかるだろう。40秒付近で左右分割されているが、右側がクリーンルームのフロアで、EUVステッパーの本体が置かれる一方、左側はクリーンルームの下の階で、ここにEUV発生装置が配される格好だ。
3月1日に設置が開始されたということは、調整などが終わってテスト照射が可能になるのは今年後半、試験的にウェハーを流せる段階まで来るのは早くて年末、現実問題として2025年以降だろう。
半導体生産工場No.2を目指すとCEOが宣言
さて今週の本題はここから。ロードマップ云々の前にパット・ゲルシンガーCEOが宣言したのが下の画像である。これは言うまでもなく相当に難易度が高い。
上の画像では、なにをもって"World's #2 Foundry"と称しているのかがわからない。「我々はNo.2 Foundryを目指す」とは言ったものの、なにがNo.2なのかは語らないままに、No.2をどうやって実現するかを説明したのだが、普通に考えれば売上か、ウェハーの生産量ということになる。
仮に売上としよう。2023年12月6日にTrendForceが発表した2023年第3四半期のTop 10 Foundriesリストに示された順位は下表のとおり。
| 2023年第3四半期のTop 10 Foundriesリスト | ||||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 順位 | ベンダー | 第3四半期売上 | ||||
| 1位 | TSMC | 172億4900ドル | ||||
| 2位 | Samsung | 36億9000ドル | ||||
| 3位 | GlobalFoundries | 18億5200ドル | ||||
| 4位 | UMC | 18億100ドル | ||||
| 5位 | SMIC | 16億2000ドル | ||||
| 6位 | HuaHong Group | 7億6600ドル | ||||
| 7位 | Tower | 3億5800ドル | ||||
| 8位 | VIS | 3億3300ドル | ||||
| 9位 | IFS | 3億1100ドル | ||||
| 10位 | PSMC | 3億500ドル | ||||
IFSはやっとPSMCを抜いてTop 9になんとか入れた。ただこれは第3四半期だけの数字であって、第1四半期~第3四半期の合計で言うと下表のとおり、IFSはTop 10にすら入っていない。上表の数字を使うにしても、No.2のSamsung Foundryの売上とは10倍の開きがある。
| 2023年第1四半期~第3四半期のTop 10 Foundriesリスト | ||||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 順位 | ベンダー | 第1四半期~第3四半期売上 | ||||
| 1位 | TSMC | 496億4000ドル | ||||
| 2位 | Samsung | 96億8100ドル | ||||
| 3位 | GlobalFoundries | 55億3800ドル | ||||
| 4位 | UMC | 54億1800ドル | ||||
| 5位 | SMIC | 46億4200ドル | ||||
| 6位 | HuaHong Group | 24億5600ドル | ||||
| 7位 | Tower | 10億7100ドル | ||||
| 8位 | PSMC | 9億6700ドル | ||||
| 9位 | VIS | 9億2300ドル | ||||
| 10位 | Nexchip | 7億1000ドル | ||||
| 圏外 | IFS | 4億8600ドル | ||||
前回説明した、Tower Semiconductorの買収が仮に成功していたとしても、合計で7億ドルに達してないわけで、3位のUMCを買収してもまだ足りない計算になる。
ではウェハー生産量か?というと、こちらはもっと難易度が高い。インテルは先端プロセスに特化したファウンダリーだから、ウェハーが完成するまでの工程が無茶苦茶多く、同じ量の製造装置であれば生産量は落ちる。
それこそTower SemiconductorやPSMCのように、比較的古いプロセスに特化した方が生産量は維持しやすい。そう考えると、おそらくは売上ベースで2位のポジションを狙う、ということだろう。

この連載の記事
-
第852回
PC
Google最新TPU「Ironwood」は前世代比4.7倍の性能向上かつ160Wの低消費電力で圧倒的省エネを実現 -
第851回
PC
Instinct MI400/MI500登場でAI/HPC向けGPUはどう変わる? CoWoS-L採用の詳細も判明 AMD GPUロードマップ -
第850回
デジタル
Zen 6+Zen 6c、そしてZen 7へ! EPYCは256コアへ向かう AMD CPUロードマップ -
第849回
PC
d-MatrixのAIプロセッサーCorsairはNVIDIA GB200に匹敵する性能を600Wの消費電力で実現 -
第848回
PC
消えたTofinoの残響 Intel IPU E2200がつなぐイーサネットの未来 -
第847回
PC
国産プロセッサーのPEZY-SC4sが消費電力わずか212Wで高効率99.2%を記録! 次世代省電力チップの決定版に王手 -
第846回
PC
Eコア288基の次世代Xeon「Clearwater Forest」に見る効率設計の極意 インテル CPUロードマップ -
第845回
PC
最大256MB共有キャッシュ対応で大規模処理も快適! Cuzcoが実現する高性能・拡張自在なRISC-Vプロセッサーの秘密 -
第844回
PC
耐量子暗号対応でセキュリティ強化! IBMのPower11が叶えた高信頼性と高速AI推論 -
第843回
PC
NVIDIAとインテルの協業発表によりGB10のCPUをx86に置き換えた新世代AIチップが登場する? -
第842回
PC
双方向8Tbps伝送の次世代光インターコネクト! AyarLabsのTeraPHYがもたらす革新的光通信の詳細 - この連載の一覧へ













