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中国テック事情:EV覇権に「バーチャル発電所」が欠かせない理由

2024年02月29日 06時42分更新

文● Zeyi Yang

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Getty

画像クレジット:Getty

中国ではバーチャル発電所の技術により、必要に応じて数百万台の電気自動車が送電網に電力を供給できるようになり、異常気象や電力不足に対処できるようになるかもしれない。

この記事は米国版ニュースレターを一部再編集したものです。

「バーチャル発電所」という言葉を中国担当記者の私が初めて聞いたのは、2022年に異常な猛暑が中国の送電網を圧倒し、中国政府が緊急の解決策として、電気自動車(EV)の充電制限を決めたことを記事にしていた時だった。バーチャル発電所(VPP)を使えば、そのような送電網の故障が再び起こる可能性を低くできると聞いたのだ。ただ、それがどのようなことを意味するのかを詳しく知る機会はなかった。

私と同じように、どうすれば発電所をバーチャル化できるのかがわからない人は、本誌のジューン・キム記者が書いた、バーチャル発電所のテクノロジーとその仕組みについて説明した洞察に富んだ記事を参考にしてほしい。今回私は、バーチャル発電所について、ジューン記者にさらにいくつか質問してみた。その結果、バーチャル発電所の技術は、EV産業と特に優れた相乗効果があり、そのため中国政府はバーチャル発電所への投資を開始したことが分かった。 

「バーチャル発電所は基本的に、送電網上の電力のバランスを取ることができる、分散型エネルギーリソースの集合体です」とジューン記者は述べる。このリソースには、EVの充電器、ヒートポンプ、屋上のソーラーパネル、電源バックアップ用の家庭用バッテリーパックなどが含まれる。「バーチャル発電所は、集中化された石炭火力発電所やガス発電所の機能を置き換えるために連携して機能するだけでなく、送電網にとって有益な他の機能も多く追加しています」。

これらのリソースを最大限に活用するために、バーチャル発電所は別のレイヤー、つまりエネルギーの消費と供給を調整する中央スマートシステムを導入している。

電力会社はこのシステムで、EVの充電時間を午前2時に変更してピークの時間を避けるなどの調整をして、エネルギー需要が高まる時間帯に対応できるようになる。

ジューン記者によると、米国政府は2030年までにバーチャル発電所の電力生成能力を3倍にすることに取り組んでいるという。これは化石燃料プラント80~160基を建設せずに済むことに相当する。「米国政府は、EVバッテリーとEVの充電のインフラが、バーチャル発電所の追加容量を構築する最大の要素になると期待しています」とジューン記者は話す。

EVが送電網に与える重大な影響を考慮すると、EV革命が他の国よりも早く起こっている中国が、バーチャル発電所に注目しているのも不思議ではない。

2023年末までに、中国のEV保有台数は2000万台を超え、世界総台数のほぼ半数に達した。これらのEVは組み合わせれば膨大な量のエネルギーを消費するが、バッテリーは緊急時のバックアップ電源としても機能する。中国ではほぼ毎夏、電力不足が発生しており、このことは中国が何百万台ものEVを既存の送電網に組み込む方法を考えなければならないことが喫緊の課題であることを意味する。

幸いなことにこの分野では、中国政府と中国のEV企業の両方からすでにいくつかの動きが見られる。

2024年1月、中国の経済計画の最高機関である国家発展改革委員会は、EV充電インフラを送電網に統合するための青写真を発表した。中国は、いくつかの都市で動的電力料金設定の実験プログラムを開始する予定だ。深夜の料金引き下げにより、EVの所有者は送電網に負荷がかかっていないときに車両を充電するようになる可能性がある。目標は、EV充電の60%以上をこの「谷間の時間帯」に実施することだ。また、公共スペースと私有地に双方向充電ステーションが設置される予定だ。これらの充電ステーションでは、EVのバッテリーが送電網から電気を引き出すことも、電気を送り返すことも可能となる。

一方、中国の大手EV企業であるニオ(NIO、上海蔚来汽車)は、自社の充電ネットワークの変革を進めている。先月、10カ所のニオの充電ステーションが上海にオープンし、EVが送電網にエネルギーを供給できるようになった。ニオはまた、全国に2000以上のバッテリー交換ステーションも所有している。これらは、バーチャル発電所ネットワークにとって理想的なエネルギー貯蔵リソースだ。ニオは2023年7月に、バッテリー交換ステーションの一部がすでに、中国東部のバーチャル発電所パイロットプログラムに接続されていることを発表している。

バーチャル発電所の導入の主な障害の1つは、参加には登録が必要になる点だ。しかし、そこには魅力的な報酬が提供されている。そう、お金だ。 

逆充電のインフラがさらに大規模になれば、何百万もの中国のEV所有者が適切なタイミングで充電し、他の電気店で売電することで多少の収入を得られるようになるだろう。

これらの試験プログラムは中国ではまだ非常に初期段階にあるため、どれだけの収益が期待できるかはわからない。しかし、米国の既存のバーチャル発電所のプロジェクトは、参考になるかもしれない。一夏の間に、マサチューセッツ州の住宅は推定550ドルの収入を得ることができる。またテキサス州の別のバーチャル発電所プロジェクトの参加者は、推定で年間150ドルを稼ぐことができる。「それほど大きな金額ではないですが、見返りがまったくないというわけではありません」とジューン記者は言う。

送電網を変革するには、長い時間がかかることは明らかだ。しかし、EV充電ネットワークと合わせてバーチャル発電所を開発することは、中国にとってWin-Winの状況のように見える。中国がEV産業での主導権を維持するのに役立ち、送電網の回復力を高め、石炭火力発電所への依存度を下げることにもなるためだ。中国の地方自治体と企業が協力して、今後数年間でバーチャル発電所を本格的に展開したとしても驚きはない。

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コピー市場に見るVRヘッドセットの将来性

華強北は、中国国内のイノベーションと模倣の拠点として知られる深センの地区だ。この華強北は密輸やコピー版の製造により、アイフォーンやエアポッドといった高価な製品を中国のユーザーに紹介する上で常に重要な役割を果たしてきた。そしてアップルの「ビジョン・プロ(Vision Pro)」が発売されたことで、華強北が消費者トレンドに与えている影響力を改めて思い知らされたと、中国のテックコラムニストである王慶瑞は述べている。

深センに拠点を置く企業の1つであるエンドアーVR(EmdoorVR)は、Vision Proとほぼ同じ外観の実質現実(VR)ヘッドセットをすでに発売している。この「ビジョンSE(VisionSE)」という名前の模倣品は機能が大幅に制限されており、価格は本家の10分の1以下である。しかし多くの華強北のブランドは、VRヘッドセットの将来性に確信が持てないため、まだ追随はしていない。これらの企業が躊躇しているということは、Vision Proが、これまでに大成功を収めたアップル製品と同じほどには受け入れられないだろうということを示す一つの兆候かもしれない。

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