東京医科歯科大学、東北大学、熊本大学らの共同研究チームは、ヒトの胎盤幹細胞を用いて、生体内の絨毛(じゅうもう、胎盤の一部を構成して酸素や栄養素の交換などの働きをする)に類似した「胎盤オルガノイド」を作製した。
東京医科歯科大学、東北大学、熊本大学らの共同研究チームは、ヒトの胎盤幹細胞を用いて、生体内の絨毛(じゅうもう、胎盤の一部を構成して酸素や栄養素の交換などの働きをする)に類似した「胎盤オルガノイド」を作製した。 ヒトの胎盤の中には絨毛があり、妊娠初期の絨毛の表面は合胞体性栄養膜細胞(以下、バリア細胞)と細胞性栄養膜細胞から成る2層構造をしている。研究チームは今回、ヒトの胎盤から樹立された胎盤幹細胞を3次元的(立体的)に培養することにより、この絨毛表面の構造を細胞培養により作り出すことを試みた。 同チームは、胎盤形成に関わる成長因子などを培養液に添加した後、8日間ほど培養することで、球状の胎盤オルガノイドを作製することに成功。この胎盤オルガノイドを詳細に解析し、実際の絨毛と同様に表面の細胞は融合しており、多くの微絨毛が観察されることを確認した。さらに、胎盤オルガノイドモデルの培養条件をもとに、妊婦から胎児への物質移行を定量的に評価可能な胎盤バリアモデル(厚みを持った胎盤細胞シート)も開発した。 胎盤オルガノイドと胎盤バリアモデルは、ウイルスなどが胎盤に感染するメカニズムや妊娠高血圧症候群に関わる胎盤形成不全のメカニズムを解明する上で有用であると考えられる。さらに、胎児への副作用を抑えた新しい医薬品の開発や、実験動物を使用しない医薬品安全性評価(動物実験代替法)の開発などにも利用可能であると期待される。 研究論文は、ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)オンライン版に、2024年2月8日付けで発表された。(中條)