アップルのARグラス「Vision Pro」でスマホの次がハッキリ見えた! 「WWDC23」特集 第35回
【自腹レポ】アップル「Vision Pro」をハワイで買った。その美点と価値はどこにあるのか(西田宗千佳)
2024年02月05日 08時00分更新
「空間を作業領域として使うOS」を持つ美点とは
セッティングの細かい説明よりも、やはり「使い勝手」を話したほうがいいと思う。なにより、圧倒的に画質がいい。
解像度が高い、発色がいいということもあるが、画像処理の高さもあり、ビデオシースルーの様子がかなり自然なものになっている。
「ああ、他のHMD(Head Mounted Display)よりもきれいなのか」そんな風に思うかもしれない。だが、それはある意味本質ではない。
画質が良いのは自然さを演出するためだ。Vision Proはビデオシースルーを使い、周囲の状況を把握しながら仕事をしたり、エンターテインメントを楽しんだりする機器だ。いままで我々は、一般的なPCやスマートフォンをディスプレイとセットにして使ってきた。「画面の中身が枠の中にある」という当然の制約はあるものの、そのことを不自然とは思ってこなかったはずだ。
だが、Vision Proでは、空間全体にアプリケーションやデータを配置できる。「ウインドウ」という四角い窓に区切られているが、その大きさや縦横比は自由に変えられるし、前後関係も自由自在だ。
そうした姿は他のHMDでも試みられてきた方法論ではあるが、技術的な制約に縛られてもいた。あるものは解像度が低くて文字が見づらく、あるものはビデオシースルーがモノクロであり、あるものはビデオシースルーの奥行き補正に制限があって、像が大きく歪んだりする。そうした姿は不自然であり、使い勝手を削ぐ要因となっていた。
だがVision Proは、それらの制約のいくつかを取り払い、かなり満足のできるレベルへと引き上げている。
解像度は高く発色も良好。ビデオシースルーの画質も多少解像感で劣るものの、現実にかなり近い。なにより、像に不自然な歪みがほとんどなく、奥行きの推定もかなり正確なので、Vision Proをかぶったまま生活できる。スマホやPCの画面を「かぶったまま」確認することも容易だ。以前なら「なんとか文字は読める」「映像は時に大きく歪む」といったハンデを背負っていたが、Vision Proでは問題ない。
すなわち「できるだけつけたまま生活する」ことが視野に入るHMDとして、Vision Proはようやく合格点を出せる製品になっている、と言えるだろう。
なにより、「PCやスマホでやっていたこと」が、ほぼそのままできるのがすごい。
例えば、ビデオ会議へのリンクを作り、それをメッセージングアプリで知り合いに送り、会議を始める……ということは、PCなら造作もない。
一方でいわゆるVR機器の場合、「画面が大きくなる」「アバターでコミュニケーションが取れる」という進化はあっても、それ以外の体験はマイナスになっていた。
ではVision Proはどうか? 現状「日本語が使えない」という欠点はあるものの、PCと同じような作業ができるし、さらに「ウインドウの大きさや配置数が自由」「Personaというアバターでちゃんと対話できる」といったメリットが追加される。
空間を作業領域として使うOSをちゃんと作り、それに必要なハードウェアを搭載していることこそが、Vision Proの美点である。
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