理化学研究所、東京大学、北海道大学の共同研究チームは、6原子程度から成る金属クラスターが無数の細かい穴(細孔)に取り込まれた触媒を創製。同触媒を用いて大気中の窒素分子(N2)からアンモニア(NH3)を、低い温度でも持続的に合成することに成功した。燃焼時に二酸化炭素(CO2)を排出しないアンモニア燃料の合成を、温和な条件下で可能にする手法であり、省エネや脱炭素社会への貢献が期待される。
理化学研究所、東京大学、北海道大学の共同研究チームは、6原子程度から成る金属クラスターが無数の細かい穴(細孔)に取り込まれた触媒を創製。同触媒を用いて大気中の窒素分子(N2)からアンモニア(NH3)を、低い温度でも持続的に合成することに成功した。燃焼時に二酸化炭素(CO2)を排出しないアンモニア燃料の合成を、温和な条件下で可能にする手法であり、省エネや脱炭素社会への貢献が期待される。 研究チームは今回、1気圧の水素流通雰囲気下250℃程度で加熱処理すると様々な反応の触媒となる、ハロゲンが配位した6原子のモリブデン(Mo)から成る金属クラスターに着目した。同クラスターにハロゲンが配位した化合物を、細孔のある多孔質担体に取り込ませ、1気圧の水素雰囲気下で加熱処理してハロゲン配位子を全て外し、1ナノメートル(1ナノメートルは10億分の1メートル)以下の金属クラスター触媒を創製。同触媒を用いて、複数のモリブデン原子を協同的に働かせて安定な窒素分子を効率的に切断し、温和な条件で持続的にアンモニアを合成できることを示した。 肥料や窒素原子を含んだ化学製品の原料として大量に使われているアンモニアは、最近では、二酸化炭素を排出しない燃料としても注目されている。アンモニアは現在、工業的には、高圧高温条件(150~350気圧下350~550℃)が必要な「ハーバー・ボッシュ法」により合成されており、温和な条件で合成できる触媒の開発が求められている。 研究論文は、科学雑誌ケミカル・サイエンス(Chemical Science)オンライン版に2024年1月22日付けで掲載された。(中條)