DXでのデータ活用を可能にした現場担当だからこその目線
自動化とデータ活用で業務改善 ユーザックシステムとマルマンの現場事例
提供: ユーザックシステム
「DXにはデータ活用が重要」とは、どのDXセミナーでもアピールされている内容。しかし、どんなデータをどのように活用すればよいかについては、なかなかよいお手本がない。今回はユーザックシステムのインサイドセールスチームを立ち上げた清水ちはる氏と、同氏が担当した文具メーカーのマルマンの事例を通して、現場での業務の自動化やデータ活用を見ていきたい。
インサイドセールスチームの立ち上げでSalesforceのデータ活用に挑戦
ユーザックシステムの清水ちはる氏は、2007年の入社以来、直販営業として問い合わせ対応や既存ユーザーのアップセルを担当してきた。マニュアル作成や営業事務をこなす中、業務改善や自動化なども手がけ、何度も社長賞を受賞している。そんな清水氏がデータ活用の重要さに気がついたのは、自身の産休明けにインサイドセールスチームの立ち上げを任されたとき。2021年のことだ。
清水氏は、基盤システムであるSalesforceの管理も担当していたが、データをうまく活用できない点に壁を感じていたという。たとえば、インサイドセールスでのコール活動において、かけてつながらなかったコールも含むのか、商談につながったのみカウントするのかで、KPIは大きく異なる。「数値目標やKPIを創出するためにはデータが必要でした。データをいかにとるか、どのようにデータを連携させるかが大きなテーマになりました」と清水氏は振り返る。
清水氏は、SalesforceをベースにインサイドセールスチームのKPIや活動定義を設定。商談に至ったレベルだけでなく、商談に至らなかった活動も明確に定義づけた。「たとえば、コールすることでお客さまの課題は聞けたけど、製品を検討していただける段階なのか、まだ情報収集の段階なのかで、こちらの動き方も異なります。商談になったコールだけではなく、こうした活動がどの段階なのか定義化する必要がありました」と振り返る。
定義が明確化されたことで、可視化されたデータが初めて意味を持つようになった。「コールした結果、どのレベルの活動が、どれくらいの割合になり、結果としてどれくらいコールすべきかの活動量が定義できるようになりました」と清水氏は振り返る。
確かに、営業の観点からすると、この活動量の定義はかなり重要だ。「直販営業だった頃、月に40件回ることになっていたのですが、なぜ40件回るかは誰も説明してくれません。だから、自分のチームではその数値を明確にしたかった。これだけ売り上げを上げるためには、これくらい商談が必要だから、これだけタッチしなければいけないとメンバーに説明し、納得感を得てもらいたかったんです」(清水氏)。成約率はコントロールできないが、訪問数にあたる活動量は自らコントロールしやすい。そのため、数字として可視化したかったという。
Autoジョブ名人、TranSpeed、Salesforce Flow、CDataなどで自動化
こうしてインサイドセールスチームの営業活動をブラッシュアップしていった清水氏だが、新入社員の研修という新たな課題にぶち当たる。2022年から、営業志望の新卒社員がインサイドセールスの業務を1年経験するという人事配置が決定したのだ。「もともと私ともう1人のメンバーが営業時代の経験を元に作り上げたインサイドセールスの仕組みだったのですが、これを新入社員にわかりやすく説明する教育プログラムが必要になったんです」と清水氏は語る。
いったん新入社員の教育を進めてみたものの、教育は思いのほか工数がかかる。清水氏は、教育を『標準化する』『自動化する』『勉強する』の3つに分けることにした。教えることを極力絞り込み、雑務に手間を煩わせないよう、業務を自動化できないかと考えるようになった。「入力の仕方が間違ってるよなんて、私も指摘したくない。そもそも入力させない。入力で間違わないようシステムで吸収するという発想ですね」と清水氏は指摘する。ここから清水氏の自動化の取り組みがスタートする。
たとえば、メディアからSalesforceへのリードの取り込み作業。「今まで特定メディアのリード取得は、通知メールからサイトにログインし、手動でデータを取得していたのですが、これだと時間がかかる。他社が先に電話してしまうんです」(清水氏)。しかし、自社製品であるAutoジョブ名人とTranSpeedを用いることで、メディアからのリード取得は自動化。外部のリードはすべてSalesforceに自動的に取り込まれ、Account Engagement(旧Pardot)を介してメール配信される。その他、Zoomからのセミナー視聴情報やアンケートなどのデータ取り込み、そしてSalesforceへのデータ登録は可能な限り自動化し、人が入力しないという環境を目指した。
自動化に関してはAutoジョブ名人、SalesforceのFlowなどを活用。Autoジョブ名人は、Webブラウザへのログイン、ファイルの取得、データのコピー&ペーストなどの処理を組み合わせて、一連の自動化フロー(スクリプト)を作成できる。GUIツールで処理のブロックを設定し、実行する順番でつなげていけば作成できるので、慣れれば現場のユーザーでも開発できる。「外部システムとの連携についてはAutoジョブ名人とTranSpeedを使いますが、Salesforce内の自動化はFlowを用いています。Flowでは条件式を書く必要がありますが、ChatGPTを活用しています。」(清水氏)とのこと。
また、データの変換・加工は同じく自社製品のTranSpeed、Salesforceなどのデータベースへの接続はCData Driverを用いている。TranSpeedはファイル同士のデータ変換を簡単に実現できるツールで、マッピングツールの指定通りにデータを生成してくれる。また、重複データの排除も可能なので、データベースには必要な情報のみ更新できる。「API代わりのCDataがあれば、直接見られないSaaSのデータベースの項目を見ることができます。ですから、TranSpeedでデータをマッピングしてあげれば、直接データを更新できます」(清水氏)。
老舗文具メーカーのマルマンは帳票発行や名入れを自動化
ユーザックシステムと同じく、業務自動化からデータ活用への道へ進んでいるのが、清水氏が担当していた老舗文具メーカーのマルマンだ(関連記事:自己流だが強い意志でスクリプトを開発 年間4800時間削減を達成した豪腕開発者)。仕掛け人とも言える野々垣 周氏は、座間にある相模工場で資材発注の事務を手がけた後、製造と物流関係の改善を担当していた。ユーザック製品は2018年に販売管理システムの入れ替えを機に、帳票発行システム「伝発名人」と送り状発行システム「送り状名人」を導入したのが最初となる。
当時の相模工場での課題はアナログな紙の発送業務だった。しかし、販売管理システム導入後は、伝発名人から指定の納品書、送り状名人からは送り状を出力できるようになった。また、出荷実績をCSVファイルで出力し、グループウェアで共有されるようになったので、簡単に確認できるようになった。こうした工場での成功体験がその後のユーザックシステム製品の導入につながっていく。
野々垣氏がユーザー会で知ったAutoジョブ名人で自動化したのは、まさに自らが面倒だと感じた事務処理だ。たとえば、前述した出荷実績を送り状名人からCSVファイルに出力して、グループウェアに登録するという処理。人手でやってもたいした作業ではないが、積み重なれば現場の負担になる。この処理に関しては、たまに登録漏れがあり、トラブルにもつながったため、自動化を進めることにしたという。
本導入後の自動化で一番効果を得られたのは、ECサイトで受注している「名入れ処理」の自動化だ。マルマンではノートやバインダーに名入れを行なうサービスを展開しているが、従来は紙で来た製造依頼伝票を事務員が見て、データ入力していたため、大きな負荷だった。「たまたま注文が増えた年だったのですが、製造依頼伝票を処理するのに1件15分くらいかかっていました」(野々垣氏)。
これに対して野々垣氏は、製造依頼伝票をデータで送信してもらうことにし、Autoジョブ名人で名入れのデータの登録処理を自動化。生成されたデータを最後に人手でチェックすればすぐに名入れ作業に取りかかれる状態にまでなったという。
また、Autoジョブ名人とともに、おもに販売管理システムとの連携で活躍しているのが、送り状名人に同梱されていたデータ連携ツールのTranSpeedになる。
TranSpeedがなかったとき、販売管理へのデータの登録は、Autoジョブ名人がExcelのデータを既定のCSVフォーマットにコピー&ペーストすることで実現していた。ただ、CSVフォーマットは500近くのヘッダがある膨大なファイルで、コピー&ペーストする箇所も多く、作業にかかる時間や正確性に悩みがあった。しかし、TranSpeedであれば、Autoジョブ名人のスクリプトから起動し、Excelデータを既定のCSVフォーマットに変換し、販売管理システムに登録するところまで自動化できた。
TranSpeedは他の用途でも使われている。たとえば、受注書がインターネットFAXで届くと、ファイルを検知してAutoジョブ名人が起動し、AI-OCRで生成されたデータに対してTranSpeedでデータを生成するといった使い方だ。販売管理システムから特定の顧客向けデータを抽出し、出荷先を調整する際などでもTranSpeedを活用。計算処理や特定条件でのデータ抽出なども可能なので、Autoジョブ名人とセットで利用することで、販売管理システムとの連携もかなり柔軟に行なえるようになった。