佐々木喜洋のポータブルオーディオトレンド 第245回
8K SOUNDの本領を引き出す
finalの自分ダミーヘッドサービスは「技術の会社」ならではの驚くべき投資
2023年12月24日 17時00分更新
計測と最終調整で本社を2回訪問
このサービスを受けるユーザーは、final本社を2回訪問する必要がある。プレス向けではインタビューなどのために3回目が設定されていた。
1日目は説明や計測が行われる。finalを訪問すると、一室に通されてサービスの説明を受ける。説明は丁寧なもので、とても分かりやすい。ここで手持ちのZE8000をソフトウェアを書き換えるために預け、代替品のZE8000を受け取る(後日返却)。
次に上半身を3D測定する。耳だけではなく、上半身を測定する理由は、耳に入る音は回折など身体の形状の影響を受け、脳はそれを加味して音を感じるからだ。それに近い状況をシミュレートするための仮想的なモデルを作るわけだ。測定では、自身の上半身を360度すべての方向から、3通りの角度で撮影する。面白いのは撮影するカメラが特殊な機材ではなくiPhoneであることだ。これは、将来的にユーザーが自分の家でできることも見越しているためだという。
回転椅子に座っての撮影となるが、回転中は目線が定まりにくく姿勢が安定しにくい。周囲にある線を目で追っていくと体勢が安定しやすい。
また、耳の全体も光方式の非接触スキャナーで測定する。これは耳全体の詳細なイメージが欠かせないからだ。耳穴の掃除は不要だそうだが、次の段階も含めてなるべく綺麗にしておくことをお勧めする。
最後に無響室で耳の中を測定する。健康診断の聴力検査のように聞こえたらボタンを押すのではなく、耳の中にマイクを差し込んで、前方に置かれたスピーカーから聞こえるスイープ信号を使って、自動的に測定が完了する。自分で何かをする必要はない。ちなみにこの手順は特に機密性が高いノウハウがあるようで、写真撮影が許可されなかった。
以上、1日目に測定したのは上半身、耳の外側、耳の内側の3箇所だ。作業は一時間ほどで完了する。まるで大学の研究室で精密に測定されているようで、ここまでやるかという感覚さえあった。わたしはこれまでいくつものカスタムイヤホンを作成してきたが、このような経験はかつてないものだ。

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