東京駅から2時間半、房総半島地域の元・小学校を新社屋にした理由とは?

山を開墾する案も!? ディスプレー会社JAPANNEXTは、なぜ田舎の廃校を本社にしたのか

文●ジサトライッペイ 編集●ASCII

提供: 株式会社JAPANNEXT

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廃校のリフォームは想像していたよりも厳しかった

ベッカーさん:ところが、移転してみたらほとんどの部屋をすぐに利用することになり、元の企画では福利厚生に使いたかった体育館まで機材で埋まってしまいました。プールもまだ手つかずですが新しいアイディアで来年までに稼働できたらと思います。私たちはこの校舎の特色を生かしながら再利用していきたくて、プールや体育館も業務と遊びが融合する魅力的な施設にしたいんですよね。そんな魅力的な職場を提供することでも、会社全体の満足度と生産性を向上させていけると思っています。ですのでプール横にサウナを作る話もあります。

――サウナいいですね!体育館はなつかしさを感じましたが、作業スペースもあっておもしろかったです。あのディスプレーの箱を使ったデスクはスマートだなーと思いました。

ベッカーさん:ああ、リファービッシュチームの作業机ですね。あれは一宮に拠点があった頃に社員と私が考案しました。通常なら捨ててしまう段ボールを再利用して、ユニークで実用的な作業机をDIYしてみたんです。使わない時は片づけられるので、スペースもうまく活用できると思ったのです。こんな風に手軽な材料で機能的な環境を実現できるのはうちの会社の強みでもありますね。

――あの構造なら必要ない時は机を片付けられるし、スペースをうまく活用できるなと思いました。

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体育館はリファービッシュチームの作業スペース。中央には50型ディスプレーの段ボールを脚代わりにした机が並んでいました

ベッカーさん:うちの会社では、創造的なアプローチとチームワークを大切にして、ニーズに合うものが市場になければ、自ら手を動かして自作しています。例えば、ディスプレーの耐久テストに使用する器具も、社内の仲間たちが協力して自作しています。これは新しいアイディアや工夫を結集し、より効率的でユニークな解決策を生み出す姿勢のあらわれだと思います。

――その工夫が随所に見られるオフィスですよね。一方で、「6年」とか「保健室」とか、教室の前の上にかかっているプレートはそのままにしているところもありましたね。

ベッカーさん:もともとは小学校なので、やっぱり地元の方を呼んだ時に、なつかしく思う人も多いですし、プレートは残したほうがいいかなと。私個人もこれがないとちょっと悲しいというか……。でもそれ以上にプレートは普通に便利だということに気づきました。

――というと?

ベッカーさん:「これを保健室に持って行ってー」とか、「あれは何年生の部屋にあるよー」とか、場所の記号としてすごく優秀なんですよ。歴史がある建物なので、会社としては使いにくいと思える部分でも使いやすいようにカスタムしていこうと思ってますが、こんな風に活用できる部分はなるべく残していきたいですね。

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教室の前にぶら下がっているプレートは、卒業制作のような温かみのあるデザイン。たしかにこれは残しておきたくなります

――機能的に働く部分はあえて残して、それが廃校の保全にもつながっているっていいですね。一宮時代から従業員は増えたのでしょうか?

ベッカーさん:いすみ市に移転する時に人材を募集して、10人ぐらい増えましたね。やはり房総半島地域にお住まいの方が多いです。このあたりだとIT系の企業が少ないので、なかなか地元を離れられないけど、IT系で働きたいという人が来てくれたのかもしれません。そんな人の受け皿になれるのであれば、すごくうれしいなと思っています。

――僕も田舎出身なので、そういった就職事情はなんとなくわかります。ちなみに、この小学校をご購入する上ですごく大変だったことはありますか?

ベッカーさん:計画段階で把握していたにもかかわらず、工事の過程で予想以上の困難が発生しました。築50年の廃校のリフォームは工事が大変なのは確かです。例えば、校舎内の配管とかが劣化していたなどは当然あるんですよね。でも、工事を引き受けてくれた業者さんの専門知識と私達の要望やアイディアを合致させて歴史ある建物を新たな目的に蘇らせることはとても良い挑戦と思ってます。長く続く挑戦には感じますが……。

――イチから建てるよりも、修繕代のほうが高くつくこともありそうですよね……。

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廊下から出られるテラス。夏は排水管の故障でここに水がが溜まり、廊下まで浸水したそうです。元・自衛官のスタッフが土嚢を作って、なんとかしたとのこと

ベッカーさん:そういった建物をよく請け負っている業者さんからも、「これだけ(建物が)古いと(修理は)きりがないですよ」って決める前から言われまして。理屈ではわかっていたんですが、実際に働いていくうちにどんどん実感していきましたね。

――そんな話を聞くと、イチから「建てる」ってプランが最初に挙がったのもうなづけますね。

ベッカーさん:はい。実は、山を買ってそこを切り開いて新社屋を建てるという話もありました。緑が多くて、まわりも全部山!という土地があって、とても気分がいいなと。一方で、この小学校がありましたので、せっかくある建物を再利用せずに放置しておくのはもったいないと感じました。校舎は同じく丘の上にありますので、自然に囲まれた環境でありながら整備が行き届いているという利点も感じられました。

――それを聞くと、古いけど最初から建物があって、しっかり整備された道路があるここで良かったのかもしれませんね。

ベッカーさん:新社屋の立地は、クルマがないとアクセスが難しく交通の便はやや限られているかもしれません。でも、ポジティブに考えると、朝のいすみ鉄道での移動はまるで小旅行のような気分になれます。あと、季節ごとに変化する風景や地元の人々とのふれあいは、新しい1日のはじまりを特別なものにしてくれると感じています。

――この田舎特有の雰囲気というか、のどかな景観や空気はうらやましいです。仕事に詰まった時の気分転換には困らない環境と言いますか……。

ベッカーさん:環境は非常にいいですね。海もここからならクルマで20分ほどで行けますし。サーフィンや釣り、船などはすぐにできます。自然に囲まれた環境だと、仕事や趣味や特技に没頭する時間から充実感と満足感をもらえて、それが新しいアイディアにもつながると思います。

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