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佐々木喜洋のポータブルオーディオトレンド 第243回

DITAの新製品「Project M」を聴く、新しいアプローチで価格帯のベストを追究

2023年12月17日 09時00分更新

文● 佐々木喜洋 編集●ASCII

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初のハイブリッド型だが、リスニング寄りで完成度の高い音

 パッケージを開封してみる。ミニチュアのカーゴコンテナのようなケースがケーブルを収納した状態で収まっている。あふれる遊び心が面白い。ケーブルにイヤホンをつけたままで、このケースに格納できるようだ。

 イヤホン本体はコンパクトで、心地よく滑らかな手触り感がある。シェルは光にかざすと美しく輝き、透明感もとても高い。製造時に混入しがちな気泡なども見られない。琥珀のようにも見える美しい仕上がりだ。

 装着感もとてもいい。ユニバーサル設計の樹脂部分が耳にピッタリと収まる。コンパクトなので、女性など耳の小さいユーザーにも向いているだろう。樹脂を内部に隙間なく埋めているせいか、遮音性もとても高く感じた。

 試聴してみると、低音域の強いパンチが楽しめるハイブリッド型イヤホンらしい音づくりだ。しかし、中音域と滑らかにつながり、ギャップを感じないスムーズなサウンドでもある。ハイブリッド型イヤホンは、ドンシャリ傾向になりがちだが、このなだらかなつながりの良さによって、全体的な音バランスがいいという感覚を覚える。低音は強めだが、引き締まっている。

 音の傾向はモニター的でドライな音ではなく、リスニング寄りの美しいサウンドだ。滑らかでわずかに暖かみがある。特に中音域から高音域にかけての音色が美しい。ステンレス筐体の外側を樹脂で固めていることが歪みを少なくしているのではないかと思う。

 中高域はヴォーカルがクリアに聞こえ、楽器音もシャープだが、「Dream」のような尖った音ではない。滑らかで聴きやすい表現だ。もっと早くハイブリッドイヤホンを開発しても良かったのではないかと思うほど、初のハイブリッドイヤホンにしては完成度が高い。

 DITA Audioのダニー・タンCEOに先日会った際、「Project Mは、DITAのエントリー機なのか」と質問してみた。タン氏は「ユーザーを増やしたいと思うが、決してエントリー機や廉価版ではない」と語っていた。使ってみると、その言葉の意味が分かる。

 Project Mはこれまでのハイエンドモデルの価格を抑えた製品ではなく、新しいアプローチで価格帯のベストを追求した製品と言えるだろう。実売価格は4万9800円。

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