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カーボンニュートラル社会では鉄鋼・セメントが不足=環境研など

2023年12月14日 06時44分更新

文● MIT Technology Review Japan

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国立環境研究所と英ケンブリッジ大学の国際共同研究チームは、全世界における鉄鋼・セメント産業を対象としたシミュレーションモデルを構築し、カーボンニュートラル達成に向けた将来像を検討。気温上昇を1.5℃から2℃未満に抑制するための二酸化炭素(CO2)排出許容量内で供給可能な鉄鋼とセメントは、将来の世界的需要に対して不足する可能性が高いことを明らかにした。

国立環境研究所と英ケンブリッジ大学の国際共同研究チームは、全世界における鉄鋼・セメント産業を対象としたシミュレーションモデルを構築し、カーボンニュートラル達成に向けた将来像を検討。気温上昇を1.5℃から2℃未満に抑制するための二酸化炭素(CO2)排出許容量内で供給可能な鉄鋼とセメントは、将来の世界的需要に対して不足する可能性が高いことを明らかにした。 研究チームはまず、これまでに国際機関から発表された全ての報告書を調査し、鍵となる可能性の高い対策を整理した。すると、鉄鋼・セメント部門の脱炭素化は、主にCO2回収・利用・貯蔵とグリーン水素の利用に期待する一方、それらの利用は関連するインフラに依存すること、そしてそのインフラ整備の進展は不確実性が高いことがわかった。 そこで同チームは、建設計画や報告書等の複数資料をもとに関連インフラ整備の不確実性を想定し、気温上昇を1.5℃から2℃未満に抑制するためのCO2排出許容量内で、どの程度の鉄鋼・セメントを世界的に供給できるのかを推定。その結果、1.5℃目標と整合的な供給可能量は2050年の成り行き需要と比較して、鉄鋼で58%から65%、セメントで22%から56%のレベルに留まることがわかった。さらに、この結果から、製造業で約40%、建設業で約60%の資源効率性向上を、1.5℃目標と整合的なベンチマークとして初めて提案した。 研究論文は、国際学術誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に2023年11月30日付けで掲載された

(中條)

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