eスポーツ出身レーサーが4連覇達成!
11月11~12日に富士スピードウェイでENEOS スーパー耐久シリーズ2023 Supported by BRIDGESTONE「S耐ファイナル 富士4時間レース with フジニックフェス」が開催され、ST-4クラスで2位に入った「エアバスター WINMAX GR86 EXEDY」がクラスチャンピオンを獲得。冨林勇佑と石井宏尚にとっては、4年連続でのS耐王者となった。
今季は激戦区のひとつと言われているST-4クラスにスイッチし、序盤戦はライバルの先行を許すレースも多かったが、中盤戦でマシンのセットアップも進み、戦闘力が向上。第5戦もてぎ5時間と第6戦岡山3時間で連勝し、14.5ポイントのリードを築いて最終戦にやってきた。
表彰台圏内でゴールすれば、自力でチャンピオン獲得という状況だったが、万が一アクシデントやトラブルに巻き込まれてリタイアとなると、ライバルチームにチャンピオン獲得の権利が回ることとなる。最終戦もミスなく41号車らしい戦いをするべく、練習走行から準備を進めた。
突然の雨で思い通りに行かない予選
しかし、土曜日の予選ではいきなり試練が訪れる。レースウィークは雨混じりの天候になりつつも、土曜と日曜は天候が回復する方向で進むと思われていたが、Aドライバー予選が始まるとポツポツと雨が降り始めた。徐々に路面が濡れていくという難しいコンディションのなか、石井はミスなく冷静にアタック。2分00秒097をマークした。しかし、非常に僅差のなかで、ライバルがタイムを上回っていき、7番手でAドライバー予選を終えた。
さすがに後方グリッドからのスタートとなると、分が悪くなる。そんな中で、挽回を見せたのがBドライバー予選を担当した冨林だ。路面コンディションはハーフウェットという状況下で果敢に攻め、2分01秒277でトップタイムを記録。これで専有走行では5番手となり、十分に表彰台圏内を狙える位置をゲットした。
グランドスタンド裏に“お肉”なお店が大集合!
ニックフェスは大盛況
今大会は「S耐ファイナル 富士4時間レース with フジニックフェス」と題して、コース上でのスーパー耐久バトルと併催する形で、グランドスタンド裏のイベント広場ではお肉料理の屋台がズラリと並んだ。
実は、今回の肉フェスでは、電力を水素によって発電した電気を各店舗に配り、運用されていた。こう言った部分も、SDGsやカーボンニュートラルを推進するスーパー耐久の現場ならではだ。
気になる出展店舗だが、サーキットでのレース観戦といえば、牛串が全国的に有名となっている。そのなかで今回は「ドイツソーセージ」「ケバブ」「牛タン串」「炙りチャーシュー丼」「ハラミステーキ」「ご当地餃子」など、さまざまなお肉料理が登場。観客だけでなく、ドライバーをはじめレース関係者も買いに来るなど、2日間を通して盛況。
売り上げも上々だったようで、もしかすると来年もどこかのレースイベントでの開催という可能性も……あるかもしれない。
短いようで長い決勝レース4時間を戦い抜き
ST-4クラス王者に!
曇り空のなかで始まった決勝レース。今回は4時間耐久で途中に3回のピットストップが義務付けられている。Aドライバーの最低乗車時間は60分ということで、それをどのタイミングで消化するのか、各チームでの駆け引きがあった。
5番手スタートの41号車は、冨林がスタートを担当。序盤の混戦を潜り抜け2番手に浮上すると、トップの884号車GRスープラが早めに1回目のピットストップを済ませたため、開始30分のところでトップに浮上した。
しかし、予想以上に寒いコンディションになったこともあり、タイヤの内圧が上がらず、前半は常にライバルが後方から迫ってくるという状況になった。開始から40分が経過したところで石井に交代するも、タイヤの内圧が理想の数値まで上がらないまま周回を重ねた。
それでも、石井は粘り強く周回を重ねて、規定の60分を消化したところで2度目のピットストップへ。ここでCドライバーの水野 大がマシンに乗り込み、レース後半に向かっていく。
開始から2時間を経過して、3番手を走行する41号車。万が一、表彰台圏内を逃したとしても、チャンピオン争いでライバルとなる60号車GR86よりも前にいることを心がけ、着実に周回を重ねていった。
この時期は日没時間が早いことと、曇り空のなかでレースが進んでいたこともあり、残り1時間を切るとサーキットは暗くなり始め、富士24時間を彷彿とさせるように各車のヘッドライトが目立ち始める雰囲気になる。
41号車は、15時を回ったところで3回目のピットストップを行ない、再び冨林が乗車。頼れるエースが、チャンピオン獲得に向けて重要な最終スティントに臨んだ。
コース上ではトラブルに見舞われる車両も増えていく中、冨林は危なげない走りをみせ、2位でフィニッシュ。2023年のST-4クラスチャンピオンを決めた。
エントラントのTRACY with DELTAにとっても、ST-4クラス挑戦は初めてだったが、強力なライバルに競り勝ち、参戦初年度で王者となった。そして冨林と石井は4年連続でS耐チャンピオンに輝き、谷口信輝が持つ6年連続チャンピオンという大記録に、また一歩近づいた。
また、TRACY with DELTAとしてはST-3クラスでも大躍進を遂げた。レースではポールポジションからスタートした38号車「ヒグチロジスティックサービスRC350 TWS」が安定した走りで3位に入り、クラスチャンピオンを獲得。39号車「エアバスターWINMAX RC350 TWS」も伊藤鷹志がライバルをコース上で追い抜くなど、力強い走りをみせ、最終戦をクラス優勝で終えた。
関係者コメント 田中延男代表
「以前からそうですが、僕は“チャンピオンを獲る”と言ったら必ず獲りますし、どんな理由があれ結果を残さないと、彼らドライバーたちの来年に繋がりませんからね。今年はST-4クラスに初めて参戦しましたが、第2戦の富士24時間での走りをみて“いける!”と思いました。そこからもてぎと岡山で2連勝して、そこまできたら獲るしかないですね。今年もチャンピオンを獲得できましたが、これはあくまで“通過点”です。これに満足することなく、さらにその先を目指していきたいです」
関係者コメント 石井宏尚選手
「ドライなのかウエットなのか怪しい状況下で、1秒以内にあれだけの台数が入った、レベルの高い予選だったと思います。その中で後方に沈んでしまったので、そこは今後対策していきたいです。決勝もタイヤの温度が作動域まで上がってくれなかったですし。一瞬日が差すとよくなるんですけど、日が陰ると厳しくなってしまう状況でした。
ただ、水野選手のスティントまで無交換でまわしていく作戦だったので、無理せずそこそこのペースで走りました。久しぶりの全クラス混走だったので、そこを安全にこなすというのをメインの目標にしていましたが、我々としてはミスなく結果を残すということは達成できたと思います」
関係者コメント 冨林勇佑選手
「日が差さないと僕たちにとっては厳しいレースでしたが、60号車と周りの状況を見ながら進めました。とはいえ、表彰台に上がってチャンピオンを決めたいという想いもあって、それを考えながら走りました。今までは僕たちにとって運が良いことが多く、今回も普通に完走すればチャンピオンという比較的楽な展開でしたが、それが逆に気が抜けなかったです。特に路面温度が下がった終盤は、全体的にタイヤの温まりが悪くて、ほかのクラスの車両も苦戦している印象がありました。だから、より一層気をつけて走っていました。
今年はラッキーでチャンピオンになったわけではなく、ちゃんとポールポジションも獲って、優勝も飾ったなかでのチャンピオンになれました。クルマの速さだったり、ドライバー力も出せたシーズンだったと思います。すべてが良い方向にいくような結果でした」
関係者コメント 水野 大選手
「とにかく完走するということが最低限の条件だったので、バトンをつなぐことを意識していました。今回のコンディションが僕たちがセットアップしたクルマに合わない状況でしたが、2人のフィードバックをもとに走らせていくことができましたし、2人がタイヤを保たせてくれて、僕のスティントで使い切るという予定だったので気兼ねなく走ることができました。
チャンピオンを獲ることができて、うれしいです。僕自身としては、過去にチャンピオン争いをしていて最終的に獲れないシーズンもありましたが、今年は2人から学んだこともたくさんあって、すごく良い1年でした」
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