アドビは12月4日、「PDFファイルのアクセシビリティに関する調査」の結果を発表した。
ウェブサイトの運営に直接携わる会社員300名(従業員数300名以下の企業から150名、従業員数301名以上の企業から150名)を対象に、12月3日から実施されている「障がい者週間」にあわせ、ウェブサイトなどで公開される企業のPDFファイルのアクセシビリティー対応について実態を明らかにするために実施したという。
PDFツールには、アクセシブルなPDFであるかを判定するためのチェック機能や、読み上げ順序の設定や文書構造のタグ付けによって、PDF内の情報を整理およびデータ化してアクセシビリティーを強化する様々な機能が備わっている。PDFを業務で利用していると回答したウェブサイトの運営に直接携わる担当者に、PDFの作成・管理ツールに含まれる「アクセシビリティ機能」を業務で使ったことがあるか聞いたところ、「頻繁に利用している」が24.2%、「ときどき利用している」が35.5%と、合わせておよそ6割(59.7%)が利用しているという回答結果となった。
また、PDFを業務で利用していると回答した担当者に、作成・提供しているPDFコンテンツにおいて、WCAG(Web Content Accessibility Guidelines)などの合理的な配慮を担保するためのアクセシビリティーのガイドラインが適用されているか聞いたところ、「全てのPDFに適用されている」が28.7%、「一部のPDFにのみ適用されている」が29.7%と、合わせておよそ6割(58.4%)の企業がアクセシビリティガイドラインを適用している結果となった。
企業が提供するPDFコンテンツの中でアクセシビリティーに配慮して行っていることについて聞いたところ、「代替テキストや説明文の付与(36.9%)」「しおり/ブックマークの付与(34.8%)」「カラーコントラストの調整(33.8%)」「文書内に検索可能なテキストを作成(32.4%)」の順に多い結果となり、情報をアクセシブルにするための有効な手段として様々な機能が適用されていることが分かったという。
PDFのアクセシビリティー確保のためには、検索可能なテキストの作成や画像に対する代替テキストの付与、見出しや段落などを適切に構造化して文書内の情報が正しく読み取れる状態にするなど、細かな設定が求められる。企業のウェブアクセシビリティーはAIを活用することで向上すると思うかを聞いたところ、「とても思う」が32.0%、「どちらかというと思う」が45.7%と、およそ8割(77.7%)の担当者が、AIによる生産性向上に期待していることが分かったとしている。
全般的に、アクセシビリティーのガイドライン適用は中小規模の企業では半数以下にとどまるなど、PDFツールの利用やコンテンツ拡充に課題があることが明らかになったが、文書構造へのタグ付けといった工数がかかるプロセスをAIによって自動化する「Adobe PDF Accessibility Auto-Tag API」といった機能が改善に役立てることができるとしている。
PDFファイルのアクセシビリティに関する調査
調査方法:インターネット調査
実施対象:300人(企画・マーケティング、販売促進、総務、デザイン・クリエイター、情報システムなどの部署に所属しており、自社のウェブサイトの作成や更新等の業務に直接関わっていると回答した人。従業員数300名以下と301名以上で150名ずつ均等割付)
調査期間:11月6日~11月7日