印南敦史の「ベストセラーを読む」 第9回
『イェール大学集中講義 思考の穴──わかっていても間違える全人類のための思考法』(アン・ウーキョン 著、花塚 恵 訳、ダイヤモンド社)を読む
人間は「脂肪25%の牛肉」より「赤身75%の牛肉」が健康的だと感じてしまう
2023年10月26日 07時00分更新
「脂肪25%」よりも「赤身75%」を健康的に感じてしまう
ちなみに、このことに関連した調査のなかでの著者のお気に入りは、牛挽肉に関するものだそうだ。
脂肪25パーセント、というとかなり身体に悪そうに感じる。なにしろ、目の前の肉の4分の1が間違いなく脂肪だと明示されているのだ。ところが、赤身75パーセントとなると、意味はまったく同じでも、ずいぶんと健康的で身体によさそうに感じる。(207ページより)
おもしろいのは、調理した牛挽肉のハンバーグを参加者に食べさせる実験に関するエピソードだ。「全員に同じ牛挽肉を同じように調理」して出したが、半分の参加者のラベルには「赤身75パーセント」、残り半分の参加者のラベルには「脂肪25%」と、料理に添えるラベルは変えたというのである。
すると、「赤身75%」の牛挽肉を食べた参加者は、「脂肪25%」の牛挽肉を食べた参加者にくらべ、「油っこさ」は低く、「赤身の味わい」は強く、「肉の質」は高く評価したのだそうだ。だとすればそれはまさに、バイアスの影響だと認めざるを得ないだろう。
たとえばこのように、本書では日常のちょっとしたことがらと紐づけた興味深いトピックスが多数紹介されている。しかも前述したとおり章ごとに1つのテーマを扱った8章構成になっているので、自分にとって役立ちそうな項目から気楽に読み進めることができるはずだ。
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イェール大学集中講義 思考の穴──わかっていても間違える全人類のための思考法アン・ウーキョン、花塚 恵ダイヤモンド社
筆者紹介:印南敦史
作家、書評家。株式会社アンビエンス代表取締役。
1962年、東京都生まれ。
「ライフハッカー[日本版]」「ニューズウィーク日本版」「東洋経済オンライン」「サライ.jp」「マイナビニュース」などで書評欄を担当し、年間700冊以上の読書量を誇る。
著書に『遅読家のための読書術』(PHP文庫)、『いま自分に必要なビジネススキルが1テーマ3冊で身につく本』(日本実業出版社)、『書評の仕事』(ワニブックスPLUS新書)、『読書する家族のつくりかた 親子で本好きになる25のゲームメソッド』『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(以上、星海社新書)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)、などのほか、音楽関連の書籍やエッセイなども多数。
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