KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルは19日、NTT法の廃止に反対し、より慎重な政策議論を要望する連名の要望書を自民党政務会長、自民党プロジェクトチームの座長、および総務大臣に提出したことを発表した。この要望書には上記の3社とともに、地方のCATV事業者など国内180の通信会社や地方自治体が加わっている。
NTT株売却による財源確保に合わせて出てきたNTT法の見直し議論
「特別な資産」を持つNTTには規制が必要と主張
3社のトップは、同日朝から自民党プロジェクトチームのヒアリングに臨んだのち、メディア向けの説明会に登壇した。
いわゆるNTT法は、日本電信電話公社(電電公社)を民営化するにあたって1984年に制定。国が3分の1以上の株式を所有する特殊会社として、通信自由化、公平な競争環境を実現すべく、インフラの提供などを責務として義務づけ。電気通信事業法とともに、国内の通信業界において大きな役割を担ってきた。
しかし今夏に入り、NTT株売却による財源確保とセットの形で、廃止を含めたNTT法の見直しの議論が自民党を中心に進んでいる。
3社の主張および要望書の内容は、基本線は同じ。国際競争力の強化のためにNTT法の見直しの必要性を認めながらも、NTT法の廃止については国民の利益が損なわれる可能性が高いとして強く反対している。
電電公社時代の設備投資累計は現在の貨幣価値では約40兆円とされるが、NTTが承継したこれらの資産は税金を元に整備した「公共資産」であり、国内の通信事業者が国民にサービスを提供するのに不可欠なものとする。この公共資産を引き継ぐ代わりに、NTTグループと他事業者の公正競争の確保、国民全体にあまねく提供を義務化するNTT法は必要という考えだ。
今回、特に強い言葉が続いたのがソフトバンクの宮川潤一CEO。NTTが完全に民営化した上で万が一、民間、特に外資が営利目的でNTTを買収することがあれば、国民生活や企業活動がその手のひらに乗る構造ができるとし、日本の重要な公共資産の運営には規制があって当然とした。
NTT側の姿勢を疑問視したのはKDDIの髙橋誠社長。「(NTTグループの)再統合はいけませんよね」「(ユニバーサルサービスの)電話を保持しないといけませんよね」「(NTTグループ各社の)資本分離をしないとこの議論は成り立ちませんよね」といった問いに対して、議論に応じる姿勢がないと口調も強く語る。また、NTT本体やNTT東西と異なり、NTT法の対象になっていないNTTドコモの完全子会社化があっさり実行されたことを受け、法律でしっかりと示す必要性を訴えた。