◆最新の中にも伝統を取り入れたデザイン
ボディー外装のほとんどはカーボンFPR製なのですが、IMSA参戦時のオリジナルをオマージュしたカラーリングにより、パッと見た感じでは素材がわかりません。ボディーサイドにはカーナンバーの代わりに50がレタリングされ、記念モデルであるところを誇示。驚いたのは、これがデカールではなくハンドペイントであること。それゆえ塗装面に段差がなく高級感いっぱい!
そのほか、CピラーにBMWのエンブレムを配置するなど“当時を再現”する心憎い演出がなされています。LEDヘッドライトの色はGTマシンを彷彿させるイエロー。レーシングな雰囲気を漂わせます。
センターロック式のホイールは、Y字スポークデザインの鍛造軽合金製で、カラーは1970年代風のゴールド。サイズはフロントが20インチでリアが21インチと大型で、タイヤは専用に開発されたミシュラン「パイロット スポーツ 4 S」。サイドウォールにはBMW50周年記念の数字「50」が刻まれていました。
足回りは、M専用設計のダブル・ジョイント・スプリング・ストラット式フロントアクスルと、5リンク式リアアクスル、電子制御式ショックアブソーバーのアダプティブMサスペンションを採用。ブレーキはMカーボンセラミック・ブレーキシステムが装備されています。
ラゲッジスペースも用意されてるので、実用性は十分。ゴルフバッグ2つは入りそうです。アクセサリーソケットなど便利アイテムは取り付けられていませんでした。ラゲッジのドアは軽いのですが、ペナペナというわけではなく、思いっきり閉めても大丈夫そう。とはいえ怖いので、ゆっくり閉めました……。
エンジンは、3リッター直列6気筒ツインターボと、Mシリーズではおなじみのユニット。ですが、最高出力560PS、最大トルク550Nmを発生する、公道走行可能なBMW Mカーに搭載された中で最もパワフルなもの。それもそのハズ、2022年シーズンのDTM(ドイツツーリングカー選手権)優勝車のパワーユニットとほぼ同等のパーツが組み込まれているのだそうです。このハイパワーを6速MTを介して後輪に伝えられます。イマドキのBMWには珍しい、とてもプリミティブなマシンです。
インテリアはレーシングと最近のBMWが融合した見事な空間。運転席と助手席はMカーボン製フルバケットシートを採用し、シートの高さと角度はネジによって3段のみ調整可能。また、ヘッドレストは取り外し式の様子。シフトノブには50周年のロゴが刻まれていました。リアスペースにはシートの代わりに2つのヘルメットを収納できるストレージコンパートメントが用意されています。
こんなスペシャルなマシンは選ばれた職人によるほぼ手作りで、完成までのリードタイムはなんと3ヵ月! そして公道とサーキットの走行は可であるものの、レース参戦は不可なのだとか。そして改造も不可なのだそうです。