東京大学、アイルランド国立大学コーク校、オーストラリア・ディーキン大学、デンマーク国立労働環境研究センターの研究グループは、労働環境と精神疾患の発症に関する過去の研究を検証し、労働環境によるストレス要因とうつ病発症の関連について解明した。
東京大学、アイルランド国立大学コーク校、オーストラリア・ディーキン大学、デンマーク国立労働環境研究センターの研究グループは、労働環境と精神疾患の発症に関する過去の研究を検証し、労働環境によるストレス要因とうつ病発症の関連について解明した。 研究グループは、物理化学的、人間工学的、心理社会的な労働環境への曝露と、精神障害の発症に関する前向き研究のうち、2017年から2021年の間に公表された系統的レビューを検索。1242件が該当し、そのうち7件の研究から26の労働環境と精神障害との関連に関する統合した推定値を抽出した。その結果、仕事の要求度ーコントロールモデル、努力報酬不均衡モデル、組織構成などの職業性ストレスの理論モデルによる抗ストレス状態、職場でのいじめと嫌がらせが、うつ病性障害の発症リスクと関係があると確認した。 さらに、労働者の精神健康を保持・増進する職場での介入を、有害影響の防止、仕事のポジティブな面の促進、精神的問題への対応の3種類に分類して、過去の研究を検証。その結果、1項目目については仕事のコントロールを改善する組織介入が一貫して効果を発揮しており、2項目目については科学的根拠は限られているが、管理監督者とリーダーシップ研修が効果的である可能性を確認した。3項目目についてはメンタルヘルスファーストエイドや偏見への対策に効果があるとの可能性を確認した。ほとんどの介入が個人に焦点を当てたものであり、組織と労働環境を改善する積極的な介入を開発、実施する必要があるとしている。 研究グループは研究結果から、「精神的問題および精神障害のリスクを増加させる科学的根拠のある労働環境を規制し、管理すべきであること」「精神的に健康な仕事を形成する方針を作成、改善すること。特に非熟練労働者および低所得労働者の労働環境に焦点をあてること」などの6つの推奨事項を提案している。 研究成果は10月12日、ランセット誌にオンライン掲載された。(笹田)