このページの本文へ

西田宗千佳の「AIトレンドトラッキング」 第5回

AIの「政治・地政学リスク」が鮮明になってきた|AIニュースまとめて解説

2023年09月21日 07時00分更新

文● 西田宗千佳 編集●ASCII

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

グーグル、AI生成「政治広告への利用」に新ポリシー(9月8日)

 日本では生成AIと言うと「著作権保護」「クリエイター保護」の方が注目されている印象もあるが、海外、特に欧米においては「フェイク対策」が重要視されている。

 中でも、彼らが強い危機感を持っているのが「政治的な宣伝への利用」だ。

 グーグルがこのタイミングでポリシーを明示したのは、2024年11月にアメリカ大統領選挙を控えており、過去のSNSを使った宣伝合戦以上にフェイク問題が注目される可能性が高いから……という事情がある。

 もちろん政治宣伝へのフェイク利用は、自国内での対抗勢力に対する牽制だけでなく、他国からの干渉に対する懸念もあるためだ。

 ロシアや中国による政治的な宣伝や世論介入は現実的なものであり、すでに深刻な危機と捉えられている。そこで生成AIが活用されると、フェイクの精度だけでなく量の面でもさらに厳しい状況が生まれるのは間違いない。

マイクロソフト、AI生成コンテンツの著作権トラブルに対して顧客保護を発表(9月11日)

 これは非常に重要な発表だ。

 生成AIを使う場合、「本当にこれで著作権侵害などのトラブルに巻き込まれないのだろうか」という懸念は付きまとう。特に企業で使う場合には、ある種の「もらい事故」を避けるために、トラブルの可能性があるサービス自体の利用を避ける可能性が出てくる。

 その中でマイクロソフトとしては、適切な設定での利用であれば問題はなく、仮に問題が出てもマイクロソフト側が対処する、という姿勢を明示することで、企業での利用を促進しようとしているわけだ。

 この辺は、AdobeがFireflyで「Adobe Stockのコンテンツのうち、問題が出ないであろうものから学習する」というポリシーを打ち出していることに近いが、よりサービスを利用する側に立ったポリシーを提示した……という形と言える。

 ただ、これは注意しておいていただきたいが、「マイクロソフトが責任を持つ」としているのは、あくまで「Microsoft 365 Copilot」「GitHub Copilot」などの企業向けサービス。コンシューマー向けのBingなどで生成されたコンテンツは対象外となる。

カテゴリートップへ

この連載の記事
ピックアップ