9月1日は防災の日。自然災害の多い日本では、毎年のように地震や台風、水害などで業務が滞るが、「喉元過ぎれば熱さ忘れる」のことわざの通り、災害対策に腰が重い企業が多いのも事実だ。3000社以上の導入を誇る「安否確認サービス2」を展開するトヨクモ マーケティング本部長 取締役の田里 友彦氏にサービス概要や市場動向、kintoneとの連携について聞いた。
災害発生時にアクセスが集中する安否確認サービス
安否確認サービスは、災害時の従業員の安否を企業が確認するためのサービス。企業の事業継続計画(BCP)とセットで検討されるものだが、BCP自体がない会社も多く、導入もまだまだ多いとは言えないという。多くの事業者がサービスを提供する中、トヨクモの参入は最後発といってもよい。そして、実はこの最後発であることで、安否確認サービスの最大の課題である「アクセスのスパイクが半端ない」に対応できているという。
安否確認サービスの難しいところは普段はまったく使われないのに、地震や台風、水害などの災害が起こると、短い時間に大量のアクセスが集中するところ。ゲームやイベント、入試などあらかじめスケジュールがわかっているイベントのアクセスと異なり、自然災害はいつ起こるかわからないので、準備も難しい。
実際、多くの安否確認サービスはユーザーが多い首都圏で災害が起こると、かなりの確率で止まるという。トヨクモの田里氏も、「サーバーに負荷がかかりすぎ、肝心なときにメールが届かないとか、画面が白いといった事態が起こりがち。実際、前バージョンでは、お客さまにご迷惑をおかけすることもあった」と振り返る。
こうした課題もあり、2017年に開始した現行の「安否確認サービス2」では、従来の安否確認サービスをインフラから作り直し、アクセスのスパイクに対応した。毎年9月1日には安否確認サービスを確実に動作させるため、全契約者を対象に一斉訓練を行なっているという。「気象庁からデータを受け取り、メールを送る前には、回答を受けるためのサーバーをすでに増強しています。とはいえ、毎回落ちないかドキドキします」と田里氏は語る。
kintoneの安否確認も実現 専用サービスとの違いは?
トヨクモの安否確認サービス2は、5つのプランが用意されているが、災害時に従業員の安否を確認するだけではなく、家族同士がやりとりすることも可能だ。「従業員本人ならともかく、家族まで含めるとやはり個人情報になります。悩んだ末、会社には見えず、家族同士がやりとりできるチャットルームの機能を上位プランに付けました」と田里氏は語る。これにより、災害時にいろいろなアプリを見ずとも、トヨクモの安否確認だけで完結できる。
最近では、大規模なエンタープライズ環境での利用を前提とした上位プランの機能強化も進めている。「たとえば、子会社まで管理したいとか、権限を細かく制御したいとか、他システムと連携させたいといったニーズです」(田里氏)。これに対してはCybozu.comやSmartHRどアカウント情報を連携させたり、閲覧権限を設定することも可能になっている。
トヨクモは単体で安否確認サービスを提供すると同時に、同社が得意なkintoneでの安否確認サービスも提案している。kintoneには安否確認テンプレートがあるので、災害時に本人や家族の安否を登録することができる。ただ、課題となるのはkintoneのライセンス。kintoneのライセンス分しか使えないということになると、全社員は使えないという会社も多い。そこでトヨクモでは自社のkintoneプラグインであるFormBridgeでアカウントを持たないユーザーからも回答を収集する方法を用いている。
両者の使い分けについては、やはりkintoneをどの程度社内で使っているかによるという。「すでにkintoneを導入しているのであれば、使い慣れているkintoneでの安否確認は導入しやすいです。安否状況をグラフにしたり、従業員同士のやりとりにkintoneの掲示板が使えます」と田里氏は説明する。一方で、安否確認サービスのような専用システムは、前述した家族とのチャットも可能なほか、気象庁の情報とも連携して、安否確認が発信されるのでなにより担当者にとってのメリットが大きい。せっかくの防災の日をきっかけに、企業としてのBCPや災害対策を再度確認してみてはいかがだろうか?