京都大学などの国際共同研究チームは、孤児作物の一つであるソバのゲノム配列を染色体レベルで高精度に解読することにより、ソバのゲノムの進化と栽培ソバの起原を解明。さらに、予測された遺伝子をゲノム編集技術に依存しない手法で改変し、これまで世界に存在しなかったモチ性ソバの開発にも成功した。
京都大学などの国際共同研究チームは、孤児作物の一つであるソバのゲノム配列を染色体レベルで高精度に解読することにより、ソバのゲノムの進化と栽培ソバの起原を解明。さらに、予測された遺伝子をゲノム編集技術に依存しない手法で改変し、これまで世界に存在しなかったモチ性ソバの開発にも成功した。 ソバは16本の染色体を持ち、そのゲノムサイズは約1.27ギガビット(12億7千万塩基)である。研究チームは、最新のゲノム解読技術を用いてソバの全染色体の塩基配列を解読。この染色体塩基配列の一部を蛍光標識したプローブDNAを合成し、プローブDNAを用いて染色体上の標的DNA配列の位置や数を可視化する「FISH法」により、染色体塩基配列が実際の染色体と1対1に対応することを顕微鏡で確認した。 この配列はソバゲノム全体の約96%をカバーしており、今後のソバの遺伝学的・育種学的研究のための参照配列と位置づけられるという。また、参照配列を解析した結果、合計3万608個の遺伝子を確認できた。 同チームはさらに、様々な作物の品種改良に利用されてきた化学物質(エチルメタンスルホン酸)を用いて、5801個体からなるソバの変異誘導集団を作成。次世代シークエンサーを使った大規模な変異検出解析から、機能が損なわれた変異遺伝子を特定。もちもちとした食感を持つ新たなソバを開発した。またソバの繁殖様式を他殖性から自殖性へ転換させることにより、新たな自殖性ソバの開発にも成功した。 研究論文は、国際学術誌ネイチャー・プランツ(Nature Plants)に2023年8月10日付けでオンライン掲載された。(中條)