この夏もカレーが熱かった
アスキーグルメのモーダル小嶋です。2023年、セブン-イレブンでは「カレーの祭典」を開催し、7月30日から名店監修のカレーを販売していました。みなさんは食べましたか?
どの商品も名店が監修しただけあり、そのクオリティーが評判になっていました。ただ、コンビニ弁当にしては、すこし価格が高いのでは……という意見もあったようです。
たとえば、地域限定ではありますが、比較的高額なのは「荻窪トマト監修 スパイスビーフカレー」です。価格は740円(税抜)。もっとも、荻窪トマトの実店舗では、2000円を超えるメニューもめずらしくないのですが。そう考えると安いと言えなくもないのかな。
荻窪トマト監修 スパイスビーフカレーについてはこちら
アスキーグルメのナベコさんが「荻窪トマト監修 スパイスビーフカレー」を食べたときのレポート記事。「コンビニで手軽に買えて、この価格で本格的な雰囲気を味わえるのだったらオススメできます」とのこと
ちなみにセブン-イレブンの名店監修メニューは、他にも、以下のような商品が並んでいました。価格はいずれも税抜です。
「エリックサウス監修 ビリヤニ」(680円)
「銀座デリー監修 カシミールカレー」(530円)
「銀座デリー監修 チキンカレードリア」(520円)
「ルー・ド・メール監修 欧風ビーフカレー」(580円)
「魯珈監修 ろかプレート」(600円)
(地域限定)
「荻窪トマト監修 スパイスビーフカレー」(740円)
「旧ヤム邸監修 和風だしのスパイスカレー」(650円)
「Suage監修 海老香るスープカレー」(680円)
さて、これらの商品を「高い」と見るべきでしょうか、「高くない」と見るべきでしょうか。
そもそも、コンビニ弁当は安くない?
シンプルに考えると、意見は次の2つに分かれそうです。「コンビニの弁当として考えれば、高い」か、「このクオリティー(味がよい)なら、高くない」というものです。
難しいのは、コンビニ弁当に何を求めるかで、考え方が変わってくることでしょう。
コンビニ弁当はあくまで手軽な食事であり、安いものである、と思う人もいます。そうなると、最近のコンビニ弁当は、単純に価格だけ見れば「安い」とは考えにくいものもあります。
セブン-イレブンの弁当は、「コク旨だれの炭火焼き牛カルビ弁当」が560円、「若鶏のチキンステーキ弁当」が580円と、600円に迫る価格のものも多い。いずれも税抜価格です。
ただし、同じ商品名でも、地域によって仕様が異なる場合もあります。たとえば「海苔弁当」は、北海道、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、鳥取県、島根県、岡山県、広島県、四国では460円(税抜)、北陸では550円(税抜)です。価格だけでなく、具材も異なっています。
その他のチェーンでも、たとえばファミリーマートでは、「デラックス海苔弁当」が600円、「生姜香る!豚ロース生姜焼弁当」が619円、鉄板焼ハンバーグ&エビフライ弁当が619円。いずれも税抜価格ですが、その時点で600円を超えるものもある。
現在、コンビニ弁当は、600円を超えるものがそれなりにあるのです。そうなると、「うーん、自炊のほうがいいかな」「外食とあまり変わらない」と思う人もいるかもしれません。
一方、ここ数年、コロナ禍でテイクアウトやデリバリーの需要が高まりました。外出のきっかけが減ったことで自炊の機会が増えた人もいるかもしれませんが、「そんなに料理をしない」「自炊はしたいが、手間はかけられない」という環境なら、弁当・惣菜を選ぶという需要もありましょう。
これは(コンビニにとって)熾烈な競争の幕開けでもありました。コンビニ弁当のライバルは競合チェーンや弁当店の商品だけでなく、テイクアウトやデリバリーを手がけている店舗も加わったのですから。
コンビニ弁当にも、「クオリティーが高い」「ここでしか食べられない」といった付加価値を積極的にプラスしないといけない時代が来ているのかもしれません。
そのような環境下から生まれた、セブン-イレブンの名店監修のカレー。「コンビニ弁当」としては高く思えるかもしれない。しかし、“デリバリーに類するもの”としてはアリではないか……という考えもあるように思うのです。カレー店の味わいを、手軽に家で食べられるというメリットがある。
手軽に買えるメリットは大きい
セブン-イレブンに限らず、記事内でチェーン店やコンビニの商品を褒めると、「もっとおいしいものはある」「同じ価格なら〇〇(専門店)のほうが」という意見をいただくときもあります。
なるほど、そういう考え方もあるでしょう。しかし、コンビニ(あるいは、チェーン店)の利点は、(ほとんどの場合)24時間営業していてどこにでもある、というところにもあるのです。もっとおいしいメニューが出てくる店、あるいは専門店に、いつでも通えるわけではない人もいる。
筆者は東京に住んでいるので、ついつい忘れそうになるのですが、誰もがそういう環境というわけではない。飲食店が近くにない、デリバリーのエリア外である……という場所に暮らしていたらどうでしょう? あるいは、何かが食べたくなったとき、お店が定休日だったり、営業時間外だったりしたら?
やや極端な例ですが、筆者の実家は新潟県のさして人口が多くない地域で、実家から徒歩圏内の飲食店はラーメン店や蕎麦を出すお店ぐらいしかありません。何の間違いか、某番組でロケ地に選ばれてしまい、テレビで見知った芸能人がそれらの店舗に行ったのを見たときは「はたしてこの人たちは満足しているのだろうか」と不安になりました(何様の目線だという話ではありますが……)。
ただ、そんな田舎にも、セブン-イレブンはありました。そうなると、そこに行けば「専門店が監修した味」が食べられるわけです。
もし、最寄り駅〜自宅(あるいはオフィスなど)の付近にコンビニがあって、そこで「クオリティーが高い」「ここでしか食べられない」という商品が入手できるのであれば、600〜700円程度であっても、価格に十分に見合うものかと思います。
デリバリーの手間と料金を考えれば、そして、「自分の暮らしている範囲にその店があるか?」というエリアの問題を考えれば、コンビニの「(ほぼ)全国にあり、手軽に買える」というメリットが立ち上がってきます。もちろん、商品自体にはある程度のクオリティーが求められますが。
以上のことから、セブン-イレブンの名店が監修した弁当は、「高くない」というのが筆者の結論ではあります。ただ、「家で自炊をする」「家族で暮らしている」「都市部/地方に住居がある」など、住環境で変わる話でもあるかもしれない……ということも書き添えておきます。
これからは、「量の話」になるかもしれない
最後に、余談を一つ。内容量を減らしていながら、パッと見ではわかりにくい「ステルス値上げ」が(特に、ネットでは)話題になることがあります。コンビニは俎上に載せられることが多いですね。弁当を上げ底にしているとか、サンドイッチの具が減っているとか。
もちろん、物価高騰のあおりは避けられない、という見方もありましょう。コンビニに限らず、多くのところで、さまざまな商品が値上げをしています。だからコンビニだけが悪いというわけでもないのですが、これに関しては、一つ触れなければいけないことがありまして……。
ここまで価格の話をしてきましたが、書いていないことがあります。“量”です。
結局のところ、たとえばコンビニ弁当が650円だとして、「ごはん大盛り、おかずがトンカツ+ハンバーグ+唐揚げ+エビフライ+付け合せ」などであれば、(選ぶかはともかく)納得する人も多いでしょう。しかし、「ごはんの量が普通、おかずのハンバーグが普通」だったらどうでしょうか?
そう、商品の価格を考える上で、量の問題はつきまとうものです。「セブン-イレブンの弁当はクオリティーが高い、どこでも買えるデリバリー的な飲食と考えれば……」というようなことを書きましたが、それも今の量が維持できればの話。
もともと、「セブン-イレブンの弁当は量が多い」という評価はあまりされていません。ここから、上げ底がひどく目立つようになったり、今よりも量が少なくなったりしていけば、たとえ味が優れていても「この価格でいいのか?」と疑問に思う人は増えていくはずです。筆者もその例外ではありません。
繰り返しになりますが、現段階では、筆者はセブン-イレブンのカレーは「高くない」と思っています。ただ、それも今の量と、価格での話。今後の展開によっては、意見を改めるかもしれません。
モーダル小嶋
1986年生まれ。「アスキーグルメ」担当だが、それ以外も担当することがそれなりにある。編集部では若手ともベテランともいえない微妙な位置。よろしくお願いします。