AMDの3D V-Cache技術はCPUコアに直接L3キャッシュのダイを結合させることで、PCゲームのパフォーマンスを飛躍的に向上させる技術だ。Socket AM4時代の「Ryzen 7 5800X3D」から始まり、AM5時代に入ると「Ryzen 9 7950X3D」を筆頭に3モデルを追加。国内未発売モデルを含めると合計5種類の3D V-Cache搭載Ryzenが存在する。
3D V-Cache搭載Ryzenのパフォーマンスは筆者のレビューで検証済みだが、一番のネックはデスクトップ向けしか存在しないということ。ノートPCに3D V-Cache搭載Ryzenが来たらどれだけパフォーマンスが上がるか……という思いが遂に通じたのか、AMDは初のモバイル向け3D V-Cache搭載モデル「Ryzen 9 7945H3XD」を発表した。
16コア32スレッド、最大クロックは5.4GHz、TDPは55Wよりという純粋にゲーマー向けではなく、ゲームもクリエイティブなアプリも快適に使いたいハイエンド志向の強いCPUとなる。搭載製品は8月下旬より発売される見込みだ。
3D V-Cacheを持たないRyzen 9 7945HXとゲーミング性能を比較すると、最も性能が出たゲームでフレームレートが53%向上、効果の出なかった1タイトルを含めた11タイトルでは平均15%高速であるとAMDは主張している。さらに3D V-Cacheを利用することで、3D V-Cacheが無い状態よりもワットパフォーマンスも向上するという。
Ryzen 9 7945HX3Dにおいても、3D V-Cacheを搭載したコアは2基あるCCDのうち片側だけである。つまり、Ryzen 9 7950X3Dと同様にWindowsがゲームであると判定したゲームであれば、3D V-Cacheを備えたCCD0が優先的に使われ、ゲームでないと判定されれば3D V-Cacheを持たないがクロックの上限が高いCCD1側で処理されるという仕組みになる。
デスクトップ用のRyzen 9 7950X3Dや7900X3Dは、この仕組みを活かすために若干のコツ(BIOS更新から、WindowsのXbox Game Barのアップデートまで)が必要だったが、Ryzen 9 7945HX3Dはシステム込みで出荷されるため、導入のハードルはより低い。
ゲームなのにWindowsがゲームと判定できないゲームはパフォーマンスが伸びきらないという設計的な弱点は残るものの、ゲーミングノートPCにおける究極のCPUとして注目すべき存在といえる。ライバルであるインテルのモバイル向け第14世代Core(Meteor Lake)はL4キャッシュ的なシステムを載せるとされており、ゲーミングノートPCの性能競争はさらに面白くなりそうな気配もある。製品の登場が非常に楽しみだ。