ポーランドのFerrum Audioは、リビングに置いても違和感のないコンパクトで洗練されたデザイン、そしてそのカジュアルな外観からは想像しにくいほどのマニアックな内部設計がなされている点が特徴だ。輸入代理店のエミライは6月に新製品のフラッグシップD/Aコンバーター「WANDLA」を国内で発売している。このタイミングに合わせ、Ferrum AudioのCEO、Marcin Hamerla(マルチン・ハメラ)氏が初来日し、その製品のユニークな特徴について直接解説した。
敢えて最初にパワーサプライ製品を投入
エミライがFerrum Audioを取り扱う狙いには昨今のパーソナルスペースの意識変化がある。在宅時間が増える中、(テレビが置いてあるリビングへの設置やデスクトップ再生などが注目され)、住まいの質を高める可能性を持つオーディオ製品が求められるようになった。Ferrum Audioの製品はこうしたニーズに応えられると捉えているそうだ。コンパクトかつ同一サイズの筐体で製品ラインナップを構成しており、ソフトウェア設計力が高く、テレビからの音声出力をHDMIケーブルで受けられるARC(eARC)にも対応するのが注目点だという。
Ferrum Audioの「Ferrum」は鉄を意味する言葉だ。これは実家が鉄鋼業を営んでいたこともあるが、ポーランドが鉄鋼業で有名ということもあるらしい。また、提供する製品の名称がギリシャ語、オランダ語、そしてエスペラント語など多彩な言語に由来しているのもユニークだ。これは、開発メンバーが欧州の各地から来ているからだそうだ。たしかに欧州ブランドが内在する多様性を感じさせる逸話ではある。
Hamerla氏はポーランドでは大手のオーディオ開発企業であるHEMの創業者でもあり、MYTEK Digitalと長年協業していた。独立ブランドを立ち上げるにあたって、MYTEK Digltaの目指すプロ市場やハイエンド市場とは異なる適切な価格帯の製品を志向することにしたという。ユニークなのは、ブランド初の製品としてパワーサプライ製品を選んだということだ。これは「HYPSOS」という製品だが、リニア電源とスイッチング電源のハイブリッド方式であり、可変電圧出力を持つ実に興味深い製品だ。
HYPSOSを開発した背景には、MYTEK Digitalのために働いていたころからパワーサプライに対するユーザーの要望が多かったためだという。ハイブリッド方式を採用したことも、オーディオ製品では普通はリニア電源が良いとされるが、実環境を考えた場合に本当にそうだろうかという点に着目した結果らしい。また、出力電圧が可変という点も顧客に合わせた製品を出したいからだそうだ。これらのことから、Ferrum Audioが内部設計において従来の常識をただ踏襲するのではなく、実際のユーザーの環境を考えた製品作りをしていることがうかがえる。
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