誰かの役に立ちたいという思いで独立、料理を武器に夫とともに発信

文●晴山香織 撮影●伊東武志

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 今、大人気の料理ユニット「ぐっち夫婦」。妻として料理を作りレシピを提案し続けているのがSHINOさんだ。勤めていた会社を辞め、独立したのはなぜなのか。人気の理由とともに、その歩みを聞いた。

YouTubeチャンネルでは、いつもおだやかな笑顔で、楽しそうに料理を教えてくれる姿が印象的。「手間のかかる調理でも、こうすれば手軽にできる、これなら楽に感じると、提案していきたいんです」。

2年間の準備期間を経て料理家として独立!

 SHINOさんは、夫のTatsuyaさんと「ぐっち夫婦」という名で、料理家活動を行っている。Instagram、YouTube、Twitterなどの総フォロワー数は100万人以上。その人気ぶりがいかほどかがわかる。見ているとどのシーンでもSHINOさんはニコニコと楽しそうに料理をしている。そして、一生懸命にコツやポイントを説明しようとこちらに話しかけてくれる。彼女が発信し続けている理由とはなんだろう。幼いころから料理好きだったのだろうか?

 「実家が青果店だったこともあって、食への興味はありました。料理も好きで、大学では栄養の勉強もして栄養士の資格をとり、卒業後は食品メーカー に勤めました」

 営業として働きながら、商品開発やパッケージの撮影、盛り付けを担当することもあった。そこで興味を持ったのがスタイリングや料理のこと。働きながらフードコーディネーター養成学校へ通い、資格取得。独立を目指していたということだろうか?

 「明確に何かをしようとは思っていなかったのですが、表現することが好きだという気持ちはあったと思います」

 Tatsuyaさんとは会社で出会い、料理好きということで意気投合して結婚。働きながら、夫婦二人がそれぞれ作る日々の料理をInstagramに投稿し始めた。これがたくさんの人の目に留まって人気となり、やがてSHINOさんは独立することに。

 「仕事を辞めて、フリーでやっていくと決めたのが自分のライフシフトだったと思います。じつは独立する2年前くらいから準備をしていたんです。夫が先に仕事を辞めて一緒に基盤を作っていけたのも良かったと思います」

 会社員として働きながら、出社前に料理の写真を撮ってInstagramにアップしたり、帰宅してからYouTube用の動画を撮ったり。Tatsuyaさんは、それに加えて動画配信の仕組みづくりやコンサルティングの仕事を増やし、会社運営を軌道に乗せていったという。「会社の仕事をしながら、自分達のこともやらなくちゃいけなかったので、正直大変でした。もうあんなに働けないと思います」と明るく笑いながら教えてくれる。その頑張りがあったからこそ、独立に向けてシフトチェンジできたのだろう。

自分達のSNSでの発信のほか、雑誌や書籍でのレシピ提案、オンライン料理教室、動画制作・配信、CMやドラマの料理監修・調理、講師など活動は多岐にわたる。

自分が前に出るのではなく、あくまでも「役立ちたい」という思い

 料理に携わる仕事に就けたらうれしいと思っていたとSHINOさんは振り返る。

 「料理家になれたらいいなという気持ちはありましたが、それよりも誰かの役に立ちたいという気持ちのほうが強かった。それは会社の仕事をしている時にも感じていたことで、人の役に立てることにやりがいを感じていたんです。ただ、それが自分達で発信する側に回って気づいたのは、InstagramやYouTubeを見てくれる人の役に立てるんだということ。自分の料理が誰かのためになっていることは本当に嬉しいことだと感じています」

 料理が好きという気持ちと、誰かの役に立てたら嬉しいという思い。それがレシピの細やかさや、料理の手順の手軽さにつながっているのだとわかる。

 「下味冷凍なら、忙しい平日でも簡単」「罪悪感ゼロで食べられるおつまみ」「遅く帰った日の晩ごはん」など、いつでも作り手の気持ちを代弁してくれている。こんなことに困っているだろう、こんな悩みがあるかもしれない。それを料理で解決しようとしてくれているのが、ぐっち夫婦であり、人気の秘密なのだろう。どこでも手に入る食材で、最低限の手間だけで、おいしい料理が作れる。そんなレシピに、どれだけの人が助けられているかは想像に難くない。

考えるより、行動。動けば、反応が返ってきて発見もあれば、改善策も見つかる。一人でやるのではなく、夫やスタッフに相談してより視野を広げて動くようにしている。

夫婦で働くからこそ得られるメリットを活かす

 夫婦ふたりで仕事をしていると、いつも一緒にいることになる。息苦しさを感じることはないだろうか。

 「お互いに自然と一人の時間をもつようにしているし、別の仕事をすることもあるので、そこまで一緒じゃないんですよ」

 SHINOさんは料理をしたり、スタイリングやコーディネートの仕事が中心。一方、Tatsuyaさんはレシピ開発の仕事に加え、営業をしたり、講師などの外に向けて話す仕事が多いのだという。

 「それぞれの仕事を把握しているので、休みを合わせやすいのもメリットです。状況がわかっていると、ここなら休めそうだからリフレッシュに旅行に行こうとすぐに合わせて動けるんです。スケジュールを立てやすいのはありがたいですね」

 取材時は、SHINOさんが妊娠中。病院に行ったりするのも、ふたりでスケジュールを調整すれば仕事をしながらできることだと言う。大きなお腹を抱えては行えない仕事も、内容を共有しているからこそ、Tatsuyaさんがスタッフと一緒にサポートできることもある。夫婦ユニットだからこそのメリットはたくさんあるのだ。

 「ネガティブにならないことも大きいです。ちょっとピンチかもしれない時も、隣に同じ状況の人がいるわけですから、自分だけじゃないって思える(笑)。一人だと落ち込んでしまうようなことでも、すぐにふたりで解決策を話し合えるのはとてもありがたい環境だと思っています。あとは、考えすぎずにすぐやってみるようにもなったのも大きいかもしれません。私は慎重なタイプだったけれど、夫は即行動なので影響は受けていると思います。自分から動かないと何も変えられないというのは、夫婦で働いてから実感したことです」と振り返る。一人では思い切れないことも、夫婦なら行動できるというのも大きいのだろう。

 これから出産し、育児を続けていけば二人のライフスタイルも変わっていくはずだ。それも夫婦で前向きに乗り越えていく姿が目に浮かぶ。

 「子ども向けの料理を提案するサイトも考えているんです。まずは離乳食ですかね。妊婦さんや子育てをしている方たちの力になれるようなレシピを出せたらいいな、と思っています」

 これからの二人の活動は、さらに広がっていく。楽しみにしている読者も、支えられる読者ももっと増えていくに違いない。

Profile:SHINO(料理家)/ぐっち夫婦

 しの/1988年東京都生まれ。料理家。フードスタイリスト、栄養士の資格も持つ。学生時代に栄養学やマーケティングを学び、食の関連企業に勤務しながら現場経験を詰む。2020年独立。雑誌や書籍でのレシピ提案のほか、企業の商品、メニュー開発、動画配信など、活動は多岐にわたる。近著に『いろいろつくってきたけど、やっぱりこの味』(扶桑社)がある。

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