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パナソニック インドに継いだ“松下魂” 第3回

パナソニックがインド人の教育に投資するのは「社会の公器」(松下幸之助)であるべきだから

2023年07月06日 19時00分更新

文● 盛田 諒(RyoMorita) 編集● ASCII

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 パナソニック エレクトリックワークスはインドに生産拠点を設け、スイッチやブレーカーなどの“地産地消”を進めています。そのなかで社会貢献活動として進めているのが教育。無料で通える技能訓練校「アンカースキルスクール」を運営し、生徒に就職のあっせんまでしています。経済的な理由から高等教育を受けられず、どんなに優秀でも仕事が見つからない人々に機会を与えていくことが学校の目的。「企業は社会の公器であれ」という松下幸之助氏の言葉がポリシーになっているといいます。現地を取材しました。

職業技能を無料で教え、就職もあっせん

 アンカースキルスクールが始まったのは2016年。これまでに2000人以上の卒業生を輩出してきました。ハリドワールはインド北部の工業団地で、メーカーの工場が並んでいます。未舗装の道も多い田舎町で、スクールの前には牛がのんびり寝そべっていました。

 当初の卒業生は61人程度ですが、今では年間500人程度を輩出する学校になりました。

 学校で教えるコースは、「組み立て」「パーツ成形」「家電修理」「携帯修理」の大きく4つ。インド国内で需要が高い職業能力を身につけられるよう設計されています。1つのコースを修了するまでの期間はおよそ2〜3ヵ月。スマホ修理などが特に人気です。

 テキスト(教科書)はすべて独自制作。生徒には無料で配られます。

 電気工事に使うキットも用意していて、すぐに練習を始められます。

スイッチやブレーカーの作り方を学ぶ「組み立て」コース

 「組み立て」コースではスイッチやブレーカーの組み立てが学べます。

 実際にパナソニックの工場から持ってきている部品を使っているため、卒業後そのまま生産ラインに入れるほど実践的な技能が学べるようになっています。

射出成形や圧縮成形の技術を学ぶ「成形」コース

 「成形」コースでは射出成形や圧縮成形の技術を学べます。ハリドワールでは需要が高く、やはり実際に現場で使われている機械で勉強可能。なお現地には別のスクールもありますが、成形を学べるのはアンカーだけということでした。

冷蔵庫や洗濯機の修理を学ぶ「家電修理」コース

  「家電修理」コースでは冷蔵庫、エアコン、洗濯機などの修理を学べます。インドでは高い家電を買い替えるより、修理して使い続けるのが一般的。卒業後はメーカーのサービスセンターで働くか、独立して修理店を開くことになるそうです。

AndroidやiPhoneの修理を学ぶ「携帯修理」コース

 「携帯修理」コースではスマホのチップやセンサーなどの仕組みを学び、Android、iOS、どちらでも修理できるような技能を学びます。世界中で通用する技能が身につけられるとあって人気のコース。卒業後はスマホ修理店を開いて独立する生徒も多いそうです。

 同コースを修了してスマホ修理店を始めたという卒業生もいます。月収は3万ルピー(約5万1000円)で、現地の平均月収8500ルピー(約1万4450円)と比べて3倍以上の高収入。これもスクールのおかげと感謝を述べていました。

パナ就職はごく一部 「社会の公器」の面目躍如?

 インドでは14歳まで公教育がありますが、お金が必要な高等教育に進める人はごくわずか。2022年、ハリドワールだけでも25万人が十分な教育を受けられていないために職を得られていない状況だといいます(ハリドワールの人口は2022年時点で243万人)。スクールはこの状況を改善して、職能を生かせる環境を作ることが第一目的。当初は「どうせパナソニックのリクルーティングが狙いなんでしょ〜」と思っていましたが、意外なことにパナソニックに就職している卒業生はごく一部。スクールに掲示されていた卒業生の就職先を見ても120人のうち5人だけで、LGやサムスンといったライバル企業に就職している卒業生も多数いました。

 「企業は社会の公器であれ」という松下幸之助氏の言葉が思い起こされるとともに、恐らく戦後の日本もこうだったのだろうという感慨もわいてきます。ここの卒業生たちがこれからのインドを作っていくのかもしれません。

 

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