今回のひとこと
「モバイルイメージングの技術進化にはまだ余地があり、ソニーは、それを実現するための手段を数多く有している。これだけ多種多様なセンサー技術を持つ企業はほかにない。センサー技術の総合力は、ソニーの圧倒的な強みになる」
三苫の1ミリを生んだ、CMOSイメージセンサー
ソニーグループのパーパスは、「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」である。その実現手段のひとつとして、同社では「感動空間の拡張」への取り組みをあげる。そして、感動空間の拡張を担っているのが、CMOSイメージセンサーである。
ソニーグループの吉田憲一郎会長兼CEOは、CMOSイメージセンサーを「感動を生み出すクリエイション半導体」と定義し、「世界中の人々のクリエイションを支えるテクノロジーとして、欠かせないものである」と位置づける。
感動空間の拡張のひとつの事例としてあげたのが、2022年秋にカタールで開催された「FIFAワールドカップカタール2022」での「三苫の1ミリ」だ。
この映像を捉えたのが、ソニーのCMOSイメージセンサーを搭載したフルサイズミラーレス一眼カメラ「α1」であったことを示しながら、「一瞬を切り取るという大きな目標を持って開発したイメージセンサーが、勝敗を分けた瞬間を撮ることに貢献した」と胸を張った。
この決定的な瞬間を捉えたことは、大きな感動を生み、サッカー日本代表のあきらめない姿勢が、強さにつながっていることを世界中に発信することになった。
さらに、吉田会長 CEOは、「ソニーのCMOSイメージセンサーは、スマホのカメラを通じて、世界中のユーザーがクリエイターになることに貢献している」と述べ、身近なデバイスを通じて、より多くの人に、感動を生み出せる環境を提供していることを示した。そして、「この分野には、過去5年で1兆円以上を投資している。今後もクリエイションを支えるキーデバイスとして注力していく」と語った。
約9000億円の投資
ソニーグループの十時裕樹社長COO兼CFOも、異口同音にイメージセンサー分野への投資を加速する姿勢を示す。
2023年度までの第4次中期経営計画と同等規模となる約9000億円の投資を見込んでいるが、2024~2026年度の次期中期経営計画でも、同等規模の投資を行うことを表明。「これまでとは次元が異なる投資が必要になる」と発言している。
イメージセンサー事業を担うソニーセミコンダクタソリューションズの清水照士社長兼CEOは「2024年度からの投資は、長崎Fab5への追加投資と、熊本に新たに取得した土地での新工場建設の準備がメインとなる。さらに、R&Dにも継続投資し、規模は小さいが、M&Aの検討も進めていく」と語る。
ソニーグループでは、熊本県合志市に27万平方メートルの土地取得を取得すると発表。2023年中には取得を完了する予定を明らかにしている。取得金額は非公表としたほか、工場建設時期についても、「いまは景気状況が悪いため、市場動向を見ながら、タイミングを判断したい」(ソニーセミコンダクタソリューションズの清水社長兼CEO)としている。
スマホ市場は縮小傾向だが、大判化で単価が上がる
ソニーセミコンダクタソリューションズは、ソニーグループのI&SS(イメージング&センシング・ソリューション)分野を担う企業であり、「イメージセンサーNo.1 ポジションの強化」を基本方針に掲げている。
事業の柱となっているのは、スマホ向けCMOSイメージセンサーであり、大判化や高性能化を軸に事業を拡大する方針を示している。
清水社長兼CEOは、「スマホでは、カメラの差異化要素として、イメージセンサーへの期待が大きい。要求される技術水準も年々高まっており、大判化に対するニーズが高い。スマホの年間出荷台数は全世界で12億台へと減少しており、今後も数量は大きく増えることはないだろう。だが、イメージセンサーが大判化することで、単価が上昇し、売上げ上昇につながると見ている」とする。
そして、「いまは、イメージセンサーがスマホの価値を高めることに貢献している。これができなくなったときに、イメージセセンサー事業も厳しくなるだろう。だが、10年先の時代まで、スマホメーカーが期待しているのは、イメージセンサーの進化である」とし、同社の付加価値戦略が、スマホ市場を支えることになるとの見方を示す。
画素の進化やロジックチップの貼り合わせによる高機能化、カッパーカッパー接続による高精度化や安定した品質を実現していくほか、4Dや5Dという領域にいち早く進出することで、ソニーの技術的優位性をさらに強固なものにしていく考えだ。
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