価格はマイクロソフト「HoloLens」に合わせた?
価格は3499ドル(日本円では約50万円)で、個人向けとしては非常に高いです。アップルも当然リサーチをしているはずなので、この金額でも購入する層が一定数はいるという判断をしているのでしょう。
ただ、これまで一番グラフィックがキレイだと言われていたフィンランドVarjo社のARヘッドセットが100万円程度だったんですよね。フライトシミュレーターなどに使われる産業用マシンで、PCに接続して使うものでした。それがワンパッケージで3500ドルというのは、ハイエンドの最高級モデルという意味ではインパクトある価格だなと感じます。
一方で、マイクロソフトのARデバイス「HoloLens2」の価格が3500ドルであるため、その価格帯に合わせてきたという印象もありました。
製品の位置付けとしてはデベロッパーキットに近いと思います。その意味で、出荷台数としては10万台も行けば大成功じゃないでしょうか。アップルは1年間で100万台の販売を目指しているとも言われており、強気の目標を持っているとも思えます。
アップルとしては珍しく発売から半年前の発表でしたが、それは開発者向けの発表だからでしょう。iPadなどの移植版アプリなどで開発者の参入を促そうということだと思います。6月21日からSDKの配布が始まっており、実際にiPadでエミュレーターを動作させる開発者が続出しています。
Vision Pro シミュレーター、とりあえず動かしてみました。Questとかと全然違うのでちょっと困惑。でも、Questのホーム画面が「アプリランチャー」なのに対し、VIsion Proのは本格的な「VRのOS」って感じがしますね。 pic.twitter.com/FgY7Lzqu8C
— やのせん@VR/メタバース教育 (@yanosen_jp) June 21, 2023
アップルはもともと発表会で「こういうことに使えるかもよ」みたいなチラ見せをして開発者を巻き込んでいくところがあります。ヒントになるものを大量に提示し、「これをうまく使ってビジネスにしてくださいね」と。その意味でいうと、開発者にすごく興味を持たせたという点では今回の発表は大成功と言えそうです。自分の周囲にいる開発者たちからは「参入したくてウズウズしている」といった空気を感じますし、特にAR系のベンチャーの人は確実に買うでしょうから。
アプリはAR中心、VRはこれで終わりか
一方、VRやメタバース方面の開発者がどうするのかはまだよくわかりません。VR系のゲームをするにはコントローラーがないので操作体型をそのまま移植することはできませんし、メタバースということで比較対象になる「VRChat」は、M2のスペックではパワー不足でパソコン版ほどのクオリティでは動かないと思われます。おそらくアップルはメタバースに興味がないんです。
どちらかというとアップルは、iPadとかiOSで動くARアプリを拡張するイメージが強いんじゃないかなと思います。iPhoneやiPadに搭載しているLiDARセンサーでスキャンした画像をVision Proで見せるとか。Vision ProにもLiDARセンサーが入っているので、たとえば部屋をぐるっと見回すだけで3D化するとか。そういうARKitの技術を利用するという話になってくるんじゃないかなと思います。
その意味でも、今までの「VR系」はこれで終わるんじゃないかという気にさせられてしまいました。アップル自身も基調講演では頑なにVRやAR、MR、さらにはメタバースといった単語を使わず、「空間コンピューティング(Spatial Computing)」という言葉で表現をしていました。
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