アップルがWWDC23で発表した「Apple Vision Pro」。ティム・クックCEOはもともとVRではなくARをやるというようなことを言っていたので発表自体に驚きはなかったんですが、問題はどこまで実現してくるんだということでした。結果としてはこれまでの悪いうわさをすべてひっくりかえすような発表だったと感じています。
アップルが何より強いのは自社でハードウェアの設計/製造ができて、OSレベルでソフトウェアの設計ができること。膨大なセンサーを搭載し、それを制御するための「R1」という新型チップを設計することで、VRに起きがちな遅延の問題を乗り越えてきました。
これまでのVR/ARデバイス、たとえばメタの「Quest Pro」のような一体型のタイプにはいくつも限界がありました。OSはAndroidベースだし、チップもパワーが足りないため、思ったとおりに動いてくれずにイラッとしてしまう。メタは自社OSの開発も一度は目指しましたが諦めたという経緯もあり、最適化に限界を抱えています。Vision Proはそのあたりを完全に解消したといえるレスポンスの良さを見せてきました。目線を動かすだけでアイコンを選択できるとか、指の位置がどれだけでたらめでもクリックできるとか。最初の操作面のストレスを完璧になくすということを徹底的に意識していましたね。
一方で、うまい見せ方をしているなという印象もありました。というのもVision ProはAR系で画面内に3Dを出したり、空間の中にキャラクターがいるように見せたりと、CGを見せることがほとんどなかった。UIだったりUX、実際に3Dキャラクターを空間内に置くようなことを一切やってきませんでした。
というのも、M2チップはQuest 3に搭載されると推測されているチップ性能の1.6倍ほどではないかと言われています。3Dの描画能力が強烈に高いわけではなく、専用グラフィックボード用チップを求められる場面が多いUnrealEngineなどを動かすのはしんどい。そういう部分ではできるだけ勝負しないという見せ方をしていた。2Dの処理を見せて、仕事に使えますというふうに見せていたなと感じます。
この連載の記事
-
第90回
トピックス
画像生成AIで年賀状 リアルな人物も簡単に -
第89回
AI
OpenAI「Sora」残念な離陸 中国勢が飛躍する動画生成AI -
第88回
AI
1枚の画像から、歩き回れる“世界”ができる 来年のAIは「ワールドモデル」がやばい -
第87回
AI
画像生成AIの進化が早すぎる 2024年に起きたことまとめ -
第86回
AI
イラストに強すぎる画像生成AIモデル SDXL系「NoobAI-XL」の衝撃 -
第85回
AI
3DモデリングにAI革命の兆し 1枚のイラストから3Dデータが完成 -
第85回
AI
誰でもVTuber時代へ フェイシャルAI技術、続々登場 -
第84回
AI
画像生成AI「Stable Diffusion 3.5」性能はものたりないが、自由度が高いのは魅力 -
第83回
AI
リアルすぎてキモい 動画AIの進化が止まらない -
第82回
AI
もはや実写と間違えるレベル 動画生成AI「Runway」の進化がすごい -
第81回
AI
AIイラスト、こうしてゲームに使っています - この連載の一覧へ