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第13回衛星放送協会オリジナル番組アワード 番組部門文化・教養最優秀賞「ドキュメンタリーシリーズ WHO I AM LIFE ヴィクトリア・モデスタ(バイオニック・ポップ・アーティスト)」

障がい者の概念を覆し続けるヴィクトリア・モデスタへの密着を通して伝わる制作陣の情熱

2023年06月28日 17時30分更新

文● 原田健

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 6月12日に「第13回衛星放送協会オリジナル番組アワード」の最優秀賞が発表され、番組部門文化・教養では「ドキュメンタリーシリーズ WHO I AM LIFE ヴィクトリア・モデスタ(バイオニック・ポップ・アーティスト)」(WOWOWプライム)が受賞した。

 同番組は、自身の義足をアートに変えて表現活動をするヴィクトリア・モデスタに密着するドキュメンタリー。ロンドンパラリンピック閉会式のパフォーマンスで注目を浴び、シンガー、モデル、クリエイティブディレクターなど多岐にわたって活躍する彼女の半生を振り返ると共に、キャリアを通じて障がい者の概念を覆し続ける彼女の2022年を追う。

 この番組を視聴するに当たり、まず感じるのは制作陣の高い熱量と強い意志だ。というのも、こういったテーマの番組は障がい者スポーツと絡めてパラリンピック開催前に多く放送され、その後はあまり取り上げられないのが常で、どうしても人々の興味が向いている世界的なイベントの機運に乗せて放送するしかないという事情が少なからずある。しかし、そういった事情を無視し、障がい者スポーツに焦点を当ててきた「WHO I AM」シリーズに、スポーツという枠を超えて多様な顔ぶれが揃う新シリーズ「WHO I AM LIFE」を追加して立ち上げ、制作&放送にこぎつけているからだ。“さまざまな事情”という逆風をはねのけて実現させるのは決して容易なことではなく、高い熱量と強い意志がなければ実現できない。その熱量は、番組内にも随所に感じられ、熱いメッセージが視聴者の心を貫いてくる。

 番組が密着するバイオニック・ポップ・アーティストのヴィクトリア・モデスは、シンガー、モデル、クリエイティブディレクターなどさまざまな分野で活躍している注目の表現者。常に新たな表現を求めて精力的に活動し、バイタリティあふれる毎日を送っている。そんな彼女の芯には「障害をブランディングし直し、アートとして体と人生を変える」という強い信念がある。その信念について、彼女や彼女の周りの人物たちへのインタビュー、そして彼女の半生をひもときながら掘り下げていくのだが、構成と画の美しさ、強いメッセージ性をはらんだ演出で、ぐいぐいと視聴者を引っ張っていく。こういったテーマは視聴者への問いかけにとどまる演出が多い中で、同番組には力強く訴えるものがある。

 人間の凝り固まった価値観をぶち壊す“革命”に奮闘している彼女のパワフルで力強い姿とその根源にある過去の苦しみを、チャレンジングな姿勢で描き出した制作陣の情熱と共に感じてほしい。

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