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高い発電効率と低い熱伝導率を備えた熱電変換材料=阪大

2023年06月09日 06時55分更新

文● MIT Technology Review Japan

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大阪大学の研究チームは、高い熱電出力因子(熱電変換材料の発電量を表す指標)が期待される単結晶のテルル化ゲルマニウム(GeTe)熱電薄膜を、シリコン(Si)基板上に創製。熱電変換材料としてこれまで、熱伝導率の低減に有利な多結晶薄膜が注目されていたが、単結晶薄膜で低い格子熱伝導率を有しつつ、高い熱電出力因子を獲得できることを示した。

大阪大学の研究チームは、高い熱電出力因子(熱電変換材料の発電量を表す指標)が期待される単結晶のテルル化ゲルマニウム(GeTe)熱電薄膜を、シリコン(Si)基板上に創製。熱電変換材料としてこれまで、熱伝導率の低減に有利な多結晶薄膜が注目されていたが、単結晶薄膜で低い格子熱伝導率を有しつつ、高い熱電出力因子を獲得できることを示した。 多量の廃熱を電気として回収する熱電変換は、クリーンな新エネルギー源として期待されている。熱電変換材料としては、硫黄(S)、セレン(Se)、テルル(Te)などを含む化合物「カルコゲナイド」材料が知られており、これらの材料は単結晶薄膜の作製が困難であるため、多結晶薄膜が主に研究されてきた。だが、多結晶薄膜には、フォノン散乱による熱伝導率低減が期待できる一方で、界面電子散乱により熱電出力因子の低下が生じるという課題があった。 研究チームは今回、単結晶に熱伝導率のみを低減する機構を取り入れることに挑戦した。比較的低温環境下において基板界面の応力場を駆使することで、フォノン散乱界面を含有した単結晶GeTe薄膜を、Si基板上に成長させることに成功。従来の多結晶薄膜の約2倍の熱電出力因子と、同程度の極小熱伝導率を同時に達成した。 今回の成果によって、身の周りの熱から自立的に電力供給を可能とする熱電発電源の開発が加速することが期待される。研究論文は、米国科学誌「ACS応用材料&インターフェイス(ACS Applied Materials & Interfaces)」に、2023年5月16日付けで掲載された

(中條)

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