アップルのARグラス「Vision Pro」でスマホの次がハッキリ見えた! 「WWDC23」特集 第2回
好調が続くApp Store、WWDC開幕直前に知っておきたいアップルの「アプリのトレンド」
2023年06月01日 02時00分更新
アップルが米国時間の6月5日(日本時間6月6日)から本社Apple Parkで開催を予定する世界開発者会議「WWDC23」に先立ち、「App Store経済圏」が2021年から2022年までの間に達成した成果について外部の調査会社が独自にまとめたレポートを紹介している。
2022年は旅行や乗車送迎サービスの好調が牽引
アップルが運営するApp Storeでは、規模の大小を問わず世界のアプリケーションデベロッパーが様々なビジネスを展開している。App Storeで活躍するデベロッパーの数は年々増え続けており、ここからダウンロードできるソフトウェアと、連携するハードウェアやサービスを活用するユーザーを巻き込んだ巨大な経済圏が確立されている。
米Analysis Groupのエコノミストが独自に実施した調査レポート「The Continued Growth and Resilience of Apple’s App Store Ecosystem(アップルのApp Store経済圏における継続的な成長と回復力)」によると、2021年から2022年までの期間にApp Store経済圏でビジネスを展開するデベロッパーの売上は1.1兆ドル(約150兆円)に到達したという。前年比では約29%の増収になる。
成長が押し上げられた背景には、コロナ禍を経て世界中で「旅行」や「乗車送迎(ライドヘイリング)」などのサービスに対する需要が回復したことがひとつの要因に挙げられている。2022年には、旅行カテゴリのiOSアプリは売上が84%上昇した。乗車送迎アプリもまた45%売上を伸ばした。
コロナ禍中後からユーザーの生活に定着した「ソーシャルメディア」や「小売アプリケーション」のサービス、アプリケーション内での広告付サービスに対する需要も旺盛だったという。2019年以降はiOSに対応するフードデリバリー系のアプリは2倍以上、日用品のEコマース系アプリは3倍以上まで売上が伸長している。アプリを使ったエンターテインメントカテゴリーのサービスは、動画や音楽のライブ配信サービスなどが耳目を集めたようだ。
2019年以降のトレンドを地域別に見ると、ヨーロッパでは継続的に決済系、乗車送迎系のサービスが成長を牽引している。米国では日用品を扱うiOS向けアプリケーションが6倍に増えた。またヨーロッパと中国ではフードデリバリー系のiOS向けアプリケーションが規模を倍に拡大している。アジア太平洋地域では2022年に、日本と韓国、オーストラリアやニュージーランドで決済系サービスが大きく成長した。
小規模デベロッパーが躍進する理由
調査レポートでは1.1兆ドルの売上について概略も伝えられている。フィジカル(アプリケーションを通じて商品や対面のサービスなどを提供するもの)のサービスの販売規模は最も大きく9100億ドルに達している。以下、アプリケーション内広告が1090億ドル、デジタル商品とサービスの販売が1040億ドルの順に並ぶ。
デベロッパーの売上は2019年から2020年の間が27%、2020年から2021年の間は27%、そして2021年から2022年の間には29%増加している。過去数年間にわたり、毎年約3割のペースで成長を続けてきた格好だ。App Storeで発生した売上は、その9割以上がアップルに手数料が渡ることなく、そのまま収益としてデベロッパーにもたらされる。
調査レポートによると、近年はとくに小規模デベロッパーがApp Store経済圏において顕著な成功を収めているという。2020年から2022年の間に小規模デベロッパー全体で71%の増益を達成した。
背景にはアップルが2021年1月から、年間収益が100万ドル以内の小規模デベロッパーによるイノベーションとビジネスを支援するために始めた「App Store Small Business Program」の効果が表れていると見られる。プログラムの対象となるデベロッパーは、前年の収益が100万ドル以内であれば、有料アプリケーションの売上とアプリケーション内課金の手数料率が標準の30%から15%に引き下げられる。この施策が小規模デベロッパーによるApp Store経済圏への参加を促し、活気あふれるプラットフォームの足場を固めていることは明らかだ。
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