物質・材料研究機構(NIMS)の研究チームは、乾燥した空気中でのマグネシウム金属負極の電気化学的活性の喪失(不活性化)の原因を明らかにし、不活性化を抑制する人工保護被膜を開発した。この技術を実用化すれば、既存のリチウムイオン電池の生産ラインを、マグネシウム金属電池生産用に転換して利用できるようになるという。
物質・材料研究機構(NIMS)の研究チームは、乾燥した空気中でのマグネシウム金属負極の電気化学的活性の喪失(不活性化)の原因を明らかにし、不活性化を抑制する人工保護被膜を開発した。この技術を実用化すれば、既存のリチウムイオン電池の生産ラインを、マグネシウム金属電池生産用に転換して利用できるようになるという。 研究チームは今回、電解液・溶存酸素・マグネシウムの三相境界面に生じる超高抵抗が、大気下でのマグネシウム金属負極の電気化学活性の喪失を引き起こすことを発見。イオン交換反応を利用して、酸素透過を抑制する人工亜鉛被膜をマグネシウム金属表面に形成させることで、乾燥した空気中でのマグネシウムの酸化を抑え、不活性化を抑制することに成功した。 リチウムイオン電池を凌駕する高エネルギー密度化が見込めるマグネシウム金属電池は、大規模蓄電池としての応用展開に大きな期待を持たれている。しかし、マグネシウム金属は、酸素や水分に触れると表面に酸化物被膜が形成され、不活性化してしまうため、マグネシウム金属電池の生産には不活性ガス中での作業が必要となる。外気を完全に遮断するためには膨大なコストがかかり、作業効率が大幅に低下することなどから、これまでマグネシウム金属電池の実用化は困難とされてきた。 今回の研究成果は、マグネシウム金属電池の実現可能性を飛躍的に高める世界初の技術であるという。研究論文は、英国王立化学会誌ジャーナル・オブ・マテリアルズ・ケミストリーA(Journal of Materials Chemistry A)に2023年4月10日付けでオンライン公開された。(中條)